世界最大級の自動車メーカーであるフォルクスワーゲングループのトップを務めるディース会長が、
トップの座には留まるものの、その権力を大きく引き剥がされてしまう可能性が新たに報道されました。
テスラに最も近い自動車メーカー
まず、今回のフォルクスワーゲングループに関してですが、
日本のトヨタと同規模の自動車販売台数を達成しながら、
それと同時に、現在既存メーカーの中では最もアグレッシブに電動化戦略を進めている自動車グループでもある、ということであり、
本メディアにおいては、そのフォルクスワーゲングループの電動化戦略について、
果たして、このような巨大企業、今まで内燃機関車を作り続けてきたレガシーな自動車メーカーが、
本当に電気自動車事業へと変革することなどできるのか、
もちろんのことですが、電動化とともに自動車業界を襲っている、
自動運転の大津波にも対応することができるのかを見極めるためにも、
最新情報をアップデートし続けていたわけですが、
それではなぜ、電気自動車シフトをいまだにやりたがらない既存メーカーが散見される中においても、
最大規模の既存メーカーが、これほどまでにEVシフトを進めることができているのかといえば、
特に2015年からフォルクスワーゲンのトップに就任した、Diessという存在が極めて大きかった、ということなのです。
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実際に、ディーゼルゲートが明るみとなった2015年以降、
Diessのトップダウンによって、フォルクスワーゲンは一気に電動化へと舵を切り、
その手腕を買われて、2018年にはフォルクスワーゲングループ全体のトップに就任し、
その傘下であるアウディやポルシェ、スコーダ、クプラなど、数多あるブランドを電動化シフトに導いたことで、
2021年現時点において、グローバルで電気自動車の販売車種を大幅に拡充、
それとともに、その生産体制についても、
ドイツのZwickauに、グループ横断的な電気自動車専用の生産工場すら立ち上げてしまうなど、
アグレッシブな電動化戦略を着実に実行しています。
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そして実際問題として、2021年現時点において、今回のフォルクスワーゲングループが、
一体どれほどの電気自動車を販売することができているのかに関しても簡単に見てみると、
グローバルにおける、2021年度の1月から10月までの、電気自動車の累計販売台数において、
トップを走っているのは、やはり電気自動車のリーディングカンパニーであるテスラな訳であり、
すでに67万台オーバーと、
おそらくですが、2021年通しでの累計販売台数に関しては、
もしかしたら90万台に迫る販売台数を達成することが、できそうな公算であると思います。
一方で、今回のフォルクスワーゲングループに関しては、
そのテスラのすぐ後ろを走る、世界第2位の電気自動車メーカーであるという点が、
実は日本では知られていないながらも、非常に重要なポイントであるわけで、
その累計販売台数についても、58万台オーバー、
したがって、2021年通しでの累計販売台数というのは、75万台近くを達成してくるわけですので、
何れにしてもこのように、電気自動車の販売台数を見ていくと、
フォルクスワーゲングループというのは、別に口だけで電気自動車を今後推進していきます、
と言っているだけでなく、
実際に電気自動車シフトを粛々と進めている、
ということなのです。
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電動化の立役者は本当にクビにされるのか
そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、
既存メーカーの中で最も電動化を進め、実際の多くの販売台数を達成しているフォルクスワーゲングループの立役者でもある、
トップを務めるDiess会長の、進退問題が急浮上してきているという驚きのニュースとなっていて、
実はこちらのニュースについては、ちょうど1ヶ月前である11月の初旬に伝えた内容となっているわけで、
現地ドイツメディアが報じてきた内容によれば、
現在強力に電動化を推し進めるDiess会長に待ったをかけているのが、
フォルクスワーゲングループの労働者29万人を代表する、労働組合のトップであるDaniela Cavalloという人物なのです。
こちらのCavalloは、Diessがインタビューにおいて発言した、
フォルクスワーゲンがこのままの電動化のスピードに甘んじれば、
フォルクスワーゲンの中で、最大3万人もの雇用を失う可能性があり、
その雇用を守るためにも、さらに電動化を進めなければならない、という発言を取り上げて、
根拠を欠く発言であるとし、
よって、フォルクスワーゲングループの取締役会の中において、調停委員会を立ち上げて、
そのフォルクスワーゲングループトップであるDiess会長の、不信任案すら提出しているのではないかと報道されている、
つまり、フォルクスワーゲンの電動化を主導してきたDiessが、
今まさに、進退の危機に直面してしまっている、
故に、今後のフォルクスワーゲングループ全体の電動化戦略が、重大な岐路に立たされている、
という経緯があったのです。
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そして、そのDiess会長を巡った進退問題に関して、ついに動きがあったということで、
こちらは現地メディアとともに、ロイターも報じてきている内容となっていていますので、
おそらく内部情報がリークしてしまっているものと、ある程度信憑性を感じることができるわけですが、
結論から申し上げて、Diess会長のフォルクスワーゲングループのCEO職の解任は、
どうやら和解に至り、今後もDiessがトップに残る見通しである、
ということだそうです。
Diess会長は実質「裸の王様」に
しかしながら、それ以上の大問題として、
残念ながら、そのCEO職の肩書きが形骸化する可能性であることも、同時に明らかとなってしまっていて、
まず、今回のDiess会長の進退問題というのは、今回に始まったことではなく、
すでに昨年である2020年中にも、中核ブランドであるフォルクスワーゲンブランドのCEO職を退き、
後任として、Ralf Brandstätterという人物をトップに据えることによって、
その当時の、性急な電動化戦略に反対する勢力に対して、妥協案を示していたわけだったのです。
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そして、今回の報道によれば、
その雇用消失の件で大反対している労働組合であったり、
同じく、雇用消失の懸念によって、その労働組合からの組織票をバックにしている、
フォルクスワーゲングループの2番目の大株主である、Lower Saxonyであったりなどのさらなる圧力によって、
フォルクスワーゲンブランドのトップであるRalf Brandstätterを経営陣に追加し、
今までDiess会長が実質的な決定権を有していた、
フォルクスワーゲンブランドやスコーダ、クプラという、大衆車セグメントのブランドの決定権を委譲して、
Diessはグループ全体の経営戦略にフォーカスするという動きである、
つまり結論としては、
Diess会長はトップとして残り続けることにはなるが、
その実質的な経営戦略を実行していくのは、権限を委譲されたRalf Brandstätterとなる見込み、
したがってDiess会長が今後決定していく経営戦略を、忠実に実行することができなくなる可能性が浮上している、
ということなのです。
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また、さらにだめ押ししてしまうと、
さらなる社内政治が水面下で動いている可能性もあるということで、
フォルクスワーゲンの法律関係のチーフアドバイザーが、今回の取締役会の再編によって、
コンプライアンス関係の部門のトップに就任するのですが、
実はこのコンプライアンス関係の部門というのは、
2015年のディーゼルスキャンダルの際に設立されて部門であるわけで、
したがってかねてよりDiess会長は、現状では不必要であるという考えから、
部門ごと廃止にしようとしていたという背景があり、
しかしながら、
その部門に利権を抱える今回の法律関係のチーフアドバイザーは、もちろんその廃止には反対であったわけで、
今回のDiess会長の力が弱体化している最中に、影響力を強めてきたのではないか、ということだそうです。
しかもその上、このチーフアドバイザーに関しては、
フォルクスワーゲンの筆頭株主であるフェルディナントポルシェからの系譜を受け継ぐ、
ポルシェ家と非常に関係が深い、ということもあって、
実はこの一連の動きについては、その筆頭株主でありながら、
これまでは一貫してDiess会長を支持する方針を表明していた、
あのポルシェ家ですら、Diess会長を牽制する形で、
敵対するチーフアドバイザーを、取締役として送り込んできたのではないかという、
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何れにしても何が言いたいのかといえば、
これまで世界最大級の自動車グループの電動化を推進してきた立役者であったDiess会長というのは、
現在水面下でうごめく様々な敵対勢力によって、その権力を無効化させられ、
しかしながら、仮にDiess会長をトップの座から引きずり下ろしてしまえば、
それはそれで、フォルクスワーゲングループの将来性を株主から不安視され、株価が暴落する懸念がありますから、
その折衷案として、Diessを会長の座には留まらせる、
ただし、実質的な経営戦略の実行能力はない、
いわば裸の王様として、トップに留めておこうとしてきているのではないか、
ということですね。
進むも地獄、留まるも地獄という自動車業界
もちろん大前提として、今回の複数ソースからの一連の報道というのは、
あくまで報道ベースとはなりますので、まだ取締役会における決定事項ではないものの、
やはりこの一連の経緯、そして今回の複数ソースの報道内容からすれば、
やはりドロドロの社内政治が繰り広げられている真っ最中であることは間違いなさそうでありますので、
何れにしても、12月9日木曜日に開催される予定の、
Diess会長の将来を決定する取締役会の決定内容については、
わかり次第最新情報をアップデートしていきたいと思います。
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繰り返しとはなりますが、
今回のDiess会長の進退問題の発端となった、
Diess会長自身の、3万人にも昇る雇用消失発言についてですが、
確かにDiess会長というのは、トップダウンによる決定が特徴的であり、
特に重要な案件であればあるほど、周辺にはほとんど相談せずに、
独自に判断していくという経営スタイルであることから、
個人的には、特に超巨大な既存メーカーの中において、
スピード感を持って決断していかなければならない、昨今の自動車業界においては、
Diess会長の経営スタイルはよりマシであるという見解ですが、
やはりその決定を快く思わない抵抗勢力の不満は高まってきていた、
という背景も存在するそうです。
しかしながら、今回のDiess会長の発言の本質というのは、
本当に首を切るという決断をするぞ、という脅しというよりも、
雇用を一人でも多く守るために、
特に間も無く正式な操業をスタートする、フォルクスワーゲンの本社から数時間圏内に位置する、
テスラのベルリン工場に対抗しなければならない、
だからこそ、現状の電動化のスピード感では、
とてもではないですが、そのテスラを筆頭とする、電気自動車、およびソフトウェアファーストなメーカーに、
シェアを大きく奪われてしまう、
つまり、その競争の敗北によって、結果として雇用を切り捨てなければならなくなってしまう、
という趣旨なのです。
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大手術の邪魔をしているのは誰だ?
つまり、現状世界で巻き起こってしまった電気自動車戦争にコミットするのかしないのか、
確かに、部品点数が半分以下に大幅に減少、
しかもその部品自体も簡素化されることによって、さらに工場の自動化が進み、
しかも、そのようなシンプルな構造ゆえに、
今までの内燃機関車のような、整備や点検が大部分で不要となる、
よって、自動車を製造販売するというこれまでの規模感でのビジネスモデルが崩壊することは、
冗談抜きで、まず確定的なわけであり、
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しかしながら、そのような既存メーカーにとっては、
パンドラの箱を開けてしまったような電気自動車戦争を、臭いものとして蓋をするというのは、
結果的に、加速度的に進む電気自動車戦争がある一定の段階に達した瞬間に、
電気自動車シフトをする以上の、雇用消失が待ち受けていることも、また確定的である、
だからこそ、今から大手術を行い、大出血を伴ったとしても、手術をやり遂げて、命を守ろうとするのか、
それとも、その大出血を恐怖に感じて、手術を行わずに、黙って死を待つのか、
少なくとも本メディアは、
治療が極めて厳しい、この大手術を行わない、ましてや、その病状の告知すら行わない医者、
つまり、世界で今何が起こっているのかすらも、正確に伝えようとしない経営者こそ、
この手術を邪魔する、最大の癌であると考えていますし、
よって、この世界で起こってしまった電気自動車戦争の実態を情報発信し続けている、ということなのです。
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果たして、病状を告知すらせずに、
今を楽に生きることができるからと、大出血を伴う手術を見て見ぬ振りをするのか、
それとも、手術が成功するかは正直わからないかもしれないが、
生き残るために、大出血を伴う手術を告知、決断するのか、
日本に住む私のような若者世代、そしてその子供や孫という子々孫々の顔を、
今一度、経営者には想像していただきながら、
懸命な判断に期待したいと思います。
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勝ち抜けおじさん、聞け
何れにしても、仮に今回取り上げた報道内容の通り、
Diess会長の権力が形骸化することが確定してしまった場合は、
残念ながら、やはり世界最大級の自動車グループであるフォルクスワーゲングループは、
本質的に電動化戦略を、さらに進めることは難しくなっていく公算であり、
本メディアが最も期待している、
既存メーカーも、この電気自動車戦争を勝ち抜いていってほしいという考えは、
脆くも崩れ去っていくものと、悲観せずにはいられないことでしょう。
したがって、このような自己保身のための社内政治というのは、
別に今回のフォルクスワーゲンだけにとどまらない、
むしろ、我々日本企業の方がよっぽど、
既得権益のケツを、クソがついてでも、尻尾を振って舐める勝ち抜けおじさんは多い、
故に、我々日本メーカーが、真の意味で、一定程度の痛みを伴う改革、
つまり電動化戦略を忠実に実行していくことは不可能である、
沈み行く船の座席争いは、船が完全に沈没するまで続いていくのだろうと絶望することしかできない、ということですね。
Author: EVネイティブ
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