環境シンクタンクであるICCTが、やはりライフサイクル全体において、
ハイブリッド車を含む内燃機関車よりも、電気自動車の方が温室効果ガスをより削減することができるという調査結果を公表し、
電気自動車はバッテリー製造時などに二酸化炭素を多く排出するのでエコではないという、トンチンカンな主張を続ける方の心を挫こうとしています。
電気自動車と内燃機関車はどちらがエコなのか?
まず今回のICCTに関してですが、アメリカの独立した非営利組織となっていて、主に環境規制当局に対し、科学的分析を提供するシンクタンクとなっているのですが、
そのICCTが今回公表してきたのが、世界各地の市場ごとの、電気自動車と内燃機関車のライフサイクルベースで見た温室効果ガス排出量が、
一体どれほど異なるのかを調査した資料となっていて、
電気自動車懐疑論においてよく指摘されるのが、電気自動車は走行中にはCO2などの温室効果ガスを排出することはないが、
その走行で使用される電力であったり、それこそ大容量のリチウムイオンバッテリーを生産する際に、
既存のガソリンエンジンなどを製造するよりずっと多くの温室効果ガスを排出するので、
全体を通してみると、つまりライフサイクル全体で見ると、電気自動車を普及させてもエコではないという主張となっていますが、
果たしてその主張が現時点において、そして10年後において正しいのかを解説していきたいと思います。
まずこちらが、主要マーケット別の内燃機関車と完全な電気自動車の、ライフサイクル全体で見た温室効果ガスの排出量の差となっているのですが、
まず大前提として、こちらは2021年現時点における最新の発電割合を反映し、
そして、国ごとに出している、2030年度におけるその発電割合であるエネルギーミックスの予測値を反映させた排出量とを比較し、
また今回の対象車種については、基本的にはミッドサイズ級の乗用車セグメントを比較対象とし、
内燃機関車に関しては、その市場の販売割合に応じてハイブリッド車も含まれています。
電気自動車は内燃機関車よりも排出削減になります
そして、この表を見ても一目瞭然ですが、
2021年現時点においても、電気自動車は内燃機関車よりもずっと排出ガスの削減に寄与しているということで、
もちろんヨーロッパ市場に関しては、66-69%ほど電気自動車の方が少なく、
アメリカ市場においても、60-68%減少、さらに石炭による火力発電の割合が高い中国市場においても、37-45%、
しかもその上、発展途上国であり、再生可能エネルギーの割合が低いインド市場においても、すでに19-20%ほど、
電気自動車の方が排出ガス削減に寄与しているというデータが明らかとなってしまっているのです。
さらに2030年においては、そのグリッドにおける発電割合がさらに再エネ由来となっていき、その分排出量は下がり、
内燃機関車と比較して電気自動車の排出ガスは、特に中国市場に関しては48-64%、さらにインド市場においても30-56%も削減することができるのです。
電気自動車はハイブリッド車よりも排出削減になります
さらに、こちらはヨーロッパ市場における、
完全電気自動車と、ガソリン車やディーゼル車である既存の内燃機関車、
そして、日本メーカーが得意としているハイブリッド車との、ライフサイクル全体における温室効果ガスの排出量の比較であり、
左側が中小型車、そして右側がSUVセグメントの車種における比較なのですが、
確かにハイブリッド車の方が、ガソリン車やディーゼル車と比較しても、概ね20%ほどその排出量を削減することができてはいるのですが、
2021年現時点において、そのどちらのセグメントにおいても、やはり完全電気自動車の方が排出量削減に大きく寄与し、
ハイブリッド車では、電気自動車の持つ排出量削減のポテンシャルの足元にも及んでいないことが、このことからも一見明らかであるということですね。
そして、今回取り上げている電気自動車とハイブリッド車の排出量の差というのは、今後より開いていく可能性もはらんでいるということで、
まずは、ここ数年でより加速度をつけて進んでいるグリッドの再生可能エネルギーによる発電割合の増加であり、
特に電気自動車においては、グリッドで発電された電力のみを使用して走行しますので、
そのグリッドの再エネ率が増えていく、つまりグリッドの脱炭素化が進めば進むほど、真の意味でのゼロエミッションカーとしてのポテンシャルを発揮することができるのです。
しかしながら、周知の通り、ハイブリッド車というのは内燃エンジンを搭載し、ガソリンやディーゼルを給油して走行することには何ら変わらず、
したがって、現在世界的に加速度をつけて導入が進んでいる、再生可能エネルギーの恩恵を限定的にしか享受することができないのです。
トンチンカンな電気自動車懐疑論で将来の可能性を潰すな
しかもその上、さらにだめ押ししてしまうと、
繰り返しとはなりますが、電気自動車というのはグリッドで生成された電力のみで走行することができるため、
グリッドの脱炭素化が進めば進むだけ、その脱炭素化の恩恵を享受することができる、
つまり、すでに発売され、街中を走っている電気自動車、例えば10年落ちの日産リーフであっても、
そのグリッドの脱炭素化の恩恵を受け、ライフサイクル全体の排出量削減に貢献することができてしまうのに対して、
ハイブリッド車においては、もちろんグリッドで生成された電力を充電することができませんので、
ライフサイクルベースで見た排出量削減のポテンシャルは、車を製造した段階でほぼ確定してしまうという、
要するに、ハイブリッド車と比較して見ると、電気自動車の持つ温室効果ガス削減のポテンシャルは計り知れない、
その電気自動車のポテンシャルを世界が理解しているからこそ、現在欧米だけでなく、現在グリッドの再エネ率の比較的低い中国市場などにおいても、
電気自動車に対して圧倒的な投資を行なっている最中でもあるわけなのです。
何れにしても、電気自動車懐疑論で散見される、電気自動車は、バッテリー製造時などに二酸化炭素を多く排出するのでエコではないという主張というのは、
今回の報告書によってトンチンカンであるということが改めて露呈しましたし、
すでにそのほかの論文でも紹介している通り、世界的に見れば電気自動車の方がエコであり、しかも、よりエコになるというポテンシャルすら秘めていますので、
そろそろ電気自動車懐疑論者は、この事実を認めて、日本メーカー潰しだー、中国の陰謀だー、などと知能の低いことを唱えるだけでなく、
電気自動車をこの日本市場においても普及させ、その世界の先進諸国の流れにおいていかれないように、前向きで建設的な議論をしていくべきなのではないでしょうか?
From: ICCT
Author: EVネイティブ
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