現在予測を大幅に超える成長率を見せている中国の電気自動車マーケットに関して、公式機関がその販売台数予測を大幅に上方修してきた一方で、
しかしながら、XpengとNIOのトップが揃って、来年までにその電気自動車市場は20%の大台に達するのではないかという、さらに大胆予測を表明し、
中国で内燃機関車が売れ続けるという神話の崩壊が現実味を帯び始めてきているのではないかという、既存の自動車メーカーにとっての厳しい現実についてを、
実際の販売台数などのデータを用いて徹底的に解説します。
中国の電動化率が現在急上昇中
まず、今回の中国市場に関してですが、本メディアにおいては様々な観点から、特に電気自動車に動向をリサーチしているわけですが、
特にCovid-19によるロックダウンが大幅緩和された、昨年である2020年の中旬以降、
その電気自動車の販売台数が急上昇している状況となっていて、
特に今年である2021年に突入してからというもの、
新車販売全体に占める電気自動車の販売台数の比率を示す電動化率が、中国数千年の歴史上、初めて10%の大台を超えただけでなく、
なんと直近の6月と7月度においては、その電動化率が15%の大台に突入し、
したがって、すでに中国市場の新車販売全体のうち、10台に1、2台は電気自動車にリプレイスされてしまっていると考えてみれば、
いかに電気自動車が売れているのかがお分かりいただけると思いますし、
何と言っても、この電動化率の変遷を示したグラフを見れば一目瞭然ですが、
今までの電動化率の曲線とは明らかに一線を画す、
よりその販売台数に勢いがついているということが、示唆されているのではないでしょうか?
また、こちらの年間販売台数の推移を示したグラフを見てみると、
2021年の1月から7月まで、
つまり、たったの7ヶ月間の販売台数の合計で、すでに昨年である2020年度の販売台数の累計を超えてきてしまっている、
単純計算してみても、前年比で倍近い成長を達成してきている、ということなのです。
新エネルギー車≒完全電気自動車
そして、このような電気自動車の販売台数が直近で急速に伸びている中国市場において、今回新たに明らかになってきていることというのが、
中国の公式機関である、中国自動車工業協会、通称CAAMが、今年の頭に示していた、
電気自動車を含む、新エネルギー車の販売台数の合計を大幅に上方修正してきた、ということなのです。
というのも、まず中国市場独自の定義である新エネルギー車とは一体なんなのかに関してですが、
こちらは本メディアにおいて定義している、
日産リーフやテスラなどの、搭載された大容量のバッテリーに充電して貯められた電力のにで走行する完全な電気自動車と、
そのバッテリーとともにガソリンエンジンも搭載し、外部電力を充電して走行することが可能なプラグインハイブリッド車という電気自動車たちとともに、
水素と酸素を反応させて電気を生成し、その電気でモーターを駆動させる水素燃料電池車という3種類のパワートレインを指し示し、
こちらの中国独自の定義については、
例えば、イギリス市場においては2035年まで、ノルウェー市場に至っては2025年までなど、
ヨーロッパ市場の多くの国で採用し始めている、ハイブリッド車を含む内燃機関車の販売禁止という定義づけと、実は同じであったり、
それこそ、こちらも今年に入ってから新たに就任したアメリカのバイデン大統領についても、
2030年までに、新車販売に占める完全電気自動車とプラグインハイブリッド車、および水素燃料電池車という3種類のパワートレインの販売割合を、
なんと50%にまで高めるという大統領令に署名するなど、
何れにしても、欧米中の三強が揃って同じような定義づけをしてきているのです。
ただし、中国市場だけに関わらず、現在の水素燃料電池車の販売台数というのは、電気自動車とは比較にならないほど少なく、
さらに重要なポイントというのは、中国が昨年である10月中に発表した、
省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0という、中国政府の意向が反映された、今後の電動化戦略において、
2035年の段階において、新エネルギー車の販売割合のうち95%以上を完全電気自動車にするという方針を表明している、
つまり、プラグインハイブリッド車と水素燃料電池車の販売割合は極めて低い水準となる、
特に水素燃料電池車に関しては、商用車としての活用にフォーカスするという方針すら表明しているくらいであり、
何れにしても、中国市場における新エネルギー車というカテゴリーというのは、現在においても電気自動車が中心、
そして今後長期的に見ても、基本的には完全電気自動車が、その販売割合の圧倒的マジョリティを占めることを意味しますので、
新エネルギー車の販売台数、イコール電気自動車の販売台数であると認識してもらって差し支えないでしょう。
2021年のEV販売台数が300万台オーバーもあり得る?
そして、中国市場における新エネルギー車に話を戻すと、
もともとCAAMが今年の冒頭に予測していた、2021年度における中国国内の新エネルギー車の販売台数の予測値というのは、
年間180万台という販売台数であり、
この予測値であったとしても、2020年度と比較して1.5倍程度もの成長を達成する見込みであったわけですが、
今回CAAMが従来の販売台数予測を大幅に引き上げ、
その2021年度全体の新エネルギー車の販売台数の合計を、240万台に引き上げるという、
つまり、従来示していた新エネルギー車の販売台数予測を、たったの数ヶ月間で1.5倍に上方修正してきた、ということなのです。
したがって、このCAAMの新エネルギー車の販売台数予測が正しかった場合、
まさに今年である2021年度というのは、電気自動車を中心とする新エネルギー車の販売台数が、
過去に類を見ないレベルでの驚異的な成長を遂げる情勢、ということになりそうです。
しかしながら、今回の中国の公式機関であるCAAMの予測だけでなく、
中国国内の様々なシンクタンクも独自の予測を展開しているのですが、
その中でも、GGIIというマーケティングリサーチ会社が独自に調査したレポートによると、
2021年度における新エネルギー車の累計販売台数は、
そのCAAMの上方修正された予測値をさらに超えて、なんと年間300万台の大台を超えてくるのではないかとも推測しているのです。
というのも、月ベースの電気自動車の販売台数の変遷を見てみればお分かりの通り、
特に中国市場に限らず、世界的に見ても、電気自動車の販売台数は、その年の後半にかけて一気に伸びていくということであり、
特に中国市場においてはその流れが顕著である、
したがって、上半期の販売台数よりも、下半期の販売台数の伸びによって、
予測値よりもさらに上振れしてくるのではないか、と指摘しています。
2021年下半期は新型EVが大量に投入
さらにGGIIは、
ちょうどこの下半期については、魅力的な新型電気自動車が次々と市場に投入されているという点も指摘していて、
例えば直近でも取り上げている、電気自動車スタートアップであるXpengの第三の電気自動車であり、
特に日本円にして268万円から購入することができる、ミッドサイズセダンのP5の発売を正式にスタートし、
10月末までに納車がスタートするそのP5については、
発売開始たったの24時間で、すでに6159台もの販売台数を達成してしまったり、
さらに、同じく中国の自動車メーカーであるBYDが、コンパクトハッチバックタイプの電気自動車としてDolphinを発売し、
こちらは特に、北京や上海といった大都市におけるシティカーとして、非常に需要があると期待されていて、
特にその実用的な電気自動車としての質とともに、日本円にして159万円から購入することができるという、圧倒的な価格競争力を達成してきています。
また、それ以外にも、現在中国市場で圧倒的に売れている電気自動車である、超格安小型電気自動車のHong Guang Mini EVに関しても、
現在の半導体の供給不足によって、その生産台数が月間3万台程度に制限されているものの、
その需要を賄うために、月間5万台程度もの生産キャパシティにまで拡張する計画も表明していますし、
さらにそのHong Guang Mini EVを発売するWulingに関しては、さらに格安小型電気自動車の発売をスタートし、
こちらも販売台数ランキングに入ってくることは間違いない情勢でもありますし、
それこそ既存メーカーの電気自動車についても、
特にフォルクスワーゲンのID.4、およびID.6の販売台数が順調に伸びてきているだけでなく、
先ほどのDolphinと同じセグメントであるID.3の先行発売もスタートしていたり、
また、メルセデスからも、売れ筋のセグメントであるEQAや、3列目シートを搭載したEQBなどが実際の納車をスタートするなど、
何れにしても、2021年末までにかけて、期待の新型電気自動車が次々と市場に投入されるわけですので、
下半期の販売台数のさらなるブーストにも期待することができる、ということなのです。
したがって、私自身についても同程度の推測をしている、GGIIの年間300万台という新エネルギー車の販売台数を達成できた場合、
もう倍の成長というところを超えて、2.5倍レベルの成長を達成することにもなってしまい、
新車販売全体に占める電気自動車の販売割合を示す電動化率はというと、
特に年度末の12月度に関しては、おそらく20%を優に超えてくる、
つまり自動車超大国である中国において、5台に1台以上が電気自動車にリプレイスされてしまっているとイメージしていただければ、
もうこの電気自動車への動きが不可逆的な流れとなることを決定づけるでしょうし、
中国政府が掲げてきている、2035年までに新エネルギー車が50%、
そして残りの省エネルギー車として、ハイブリッド車が50%という販売比率の予測を、本当に信用してしまっていいのであろうか、
むしろ逆に、この数値目標が上振れするということを全て織り込んだ上、
つまりある種、下に見積もることによって、中国の自動車市場の電動化には、まだ時間的な余裕があるように見せかけておいて、
自国の自動車メーカーの電気自動車の実力がついたと見るや、一気に電動化に舵を切って切る、
もちろん2035年以降ハイブリッド車を売れるようにするなんてゆるゆるな規制だけで収まるのか、
チャイナを楽観視しすぎ、見くびりすぎであると感じるのは、私だけでしょうか?
現状の電動化率は下に見積もりすぎ?
ちなみに、今回の中国市場における電気自動車の需要が急速に高まり、
今後さらに加速度をつけていくのではないかと推測しているのは、何も私だけではなく、
特に電気自動車スタートアップのトップたちが、世間で思っている以上の電動化率の伸びを達成してくるのではないかと主張していて、
というのも、まずはNIOのトップであるWilliam Liによれば、
電動化率が来年である2022年通しで20%を超えてくる可能性が高く、
そうなると、中国政府が掲げている、2025年までに新エネルギー車の販売割合20%という目標を、なんと3年前倒しで達成してくるということを意味する、
つまり、そのあとの数値目標である、2035年までに、新エネルギー車の販売割合50%という数値目標が、
やはり下に見積もりすぎではないか、と主張しているのです。
さらに、XpengのトップであるHe Xiaopengについても全く同様に、
現在の中国の電気自動車マーケットについては、すでに成長軌道に乗ってしまっている状態であり、
特に、新エネルギー車の中でも、Xpeng自身が発売している完全な電気自動車の販売割合が、中国全土においても10%を超え始めてしまっているということ、
さらに重要であるのが、特に上海、深圳、北京といった大都市圏に限った電動化率が、なんと20%の大台をすでに突破し始めてしまっているということ、
つまり、すでにそのような大都市圏においては、5台に1台以上が、完全な電気自動車にリプレイスされてしまっているとイメージしていただければ、
これは間違いなく、現在中国政府が公式に掲げている、
2035年までに完全な電気自動車を含む、新エネルギー車の販売割合50%という目標を、大きく上回る伸び率を達成しているのではないでしょうか?
ちなみに、今回のHe Xiaopengの推測によれば、
2025年までに、新エネルギー車の販売割合は大台の30%を超えるのではないかと推測していますが、
個人的には、この電動化の流れの加速が続いていけば、30%どころでは済まないのではないかとさえ考えていますが、
果たして、これらの電気自動車マーケットで成功を収めているトップの考えが正しいのか、それとも楽観的すぎるのか、
答えはもう間も無く明らかとなってきますので、
まずは今年である2021年末に向けて、どれほどの電気自動車の販売台数を達成することができるのか、
果たして大台の20%を超えることはできるのか、非常に期待しながら注目していきたいとは思います。
2035年以降もハイブリッド車売れると思ってます?
また、先ほどの繰り返しとはなりますが、
このように電気自動車の販売台数が想定を大きく超えるスピードで成長を遂げていった場合、
もちろんですが、チャイナが目指しているのは、自動車産業において世界の覇権を取りに行くことであり、
現在中国国内の自動車メーカーが電気自動車マーケットにおいて力を発揮し、
コアテクであるバッテリーを筆頭として、自国のみでの生産体制を確立することができた段階で、
14年後である2035年までに、現状の新エネルギー車の割合50%を目指しながら、
それ以外は海外勢、特に我々日本メーカーの得意なハイブリッド車にするといったような、
自動車産業の脱炭素化において、生ぬるい方針を一夜にして方針転換し、
一気に、完全な電気自動車を中心とする、新エネルギー車のみに舵を切ってくる可能性だって、
まさに自国中心主義を徹底するチャイナであれば、平気で断行してくる可能性が多分に想定される、ということなのです。
だからこそ、中国で電気自動車は普及するわけはないんだー、であったり、
現在は電気自動車に対する優遇政策が取られているだけで、結局はハイブリッド車で強みを持っている日本メーカーが有利となる電動化戦略なのだー、
という主張は、確かに表面的なチャイナの主張だけを見ると間違いではないものの、
繰り返しとはなりますが、
チャイナというのは、自国の技術力で持って、世界の覇権を握るという絶対的な方針によって、
よく言えば柔軟に、悪く言えば前提をひっくり返す国であるという点は、しっかりと念頭に入れて、
果たしてこの電気自動車の伸びによって、
すでに電動化率目標を大幅に引き上げてきてもいるチャイナが、
現状の電動化戦略を堅持し続けると楽観視していいのか、今一度真剣に考える必要があると思います。
EV戦争は覇権戦争です
したがって、電気自動車の生産体制、
特に、チャイナに依存してしまっているバッテリーの原材料関係のサプライチェーンなどを、日本市場においても構築したり、
それも含めて、日本では電気自動車はエコではないから普及しないんだー、などと、今後没落する日本国内の論理を語るという、無意味なことをせずに、
世界の勢力図を塗り替えようとする、大国間のパワーゲームの一環として、電気自動車の競争力を高める必要性を、
地政学上のリスクという観点から、
国がリーダーシップをとって発揮していく必要があるのではないでしょうか?
From: GGII
Author: EVネイティブ
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