【EV史上最悪総額2200億円以上、、】米GM、EV14万台以上をリコールへ

GM

アメリカのGMが発売しているBoltという電気自動車が、度重なる発火事故を受けて、バッテリーを交換するという大規模リコールに踏み切りました。

電動化に本気のGM

まず今回のGMに関してですが、アメリカ最大の自動車メーカーであり、

新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年度における販売台数が、グローバルで700万台オーバーという、

世界有数の自動車メーカーとして君臨しているのですが、

そのGMに関しては、現在白熱する電気自動車戦争に乗り遅れないために、たったの14年後である2035年までに、GMが発売する全ての新車販売を、

日産リーフやテスラのような、搭載された大容量のバッテリーに充電して貯められた電力のにで走行する完全な電気自動車、

もしくは、トヨタが発売しているミライのような水素燃料電池車という、

何れにしても、走行中にCO2を一切排出しないゼロエミッションカーの発売のみに完全移行するという、非常にアグレッシブな目標を掲げてきているのです。

また、その目標を確実に達成するために、この直近の第二四半期の決算発表において、

2020年から2025年までの5年間における、電気自動車と自動運転に対する投資額を、

元々の270億ドル、日本円に換算して3兆円程度という規模から、さらに80億ドルを追加した、合計して350億ドル

日本円にして、およそ4兆円近くもの投資額に、大幅増資してきてもいるのです。

史上最悪規模のEVリコール案件に発展

そして、いよいよGMの高級車ブランドであるキャデラックから、今年である2021年の秋にも、フルサイズピックアップトラックであるHummer EVの発売をスタートさせながら、

さらに、来年である2022年の前半にも、同じくキャデラックブランドからLYRIQというフルサイズSUVの発売もスタートさせるなど、

その投資計画の期限である2025年までに、グローバルで100万台以上もの電気自動車を発売する方針も表明しています。

そして、そのような電動化に極めて積極的なGMに関して、今回新たに明らかになってきていることというのが、

そのGMが現在唯一発売している電気自動車であるBoltに対して、自然発火のリスクがあるとして、

バッテリーモジュールの交換のリコールをアナウンスしてきたということで、

実はこのBoltのリコールというのは、何も今回が初めてではないという点が最も重要なポイントであり、

というのも、実はこのBoltについては、すでに2017年から2019年に生産されているモデル、合計して6万8000台程度という超大規模な台数に対して、

そのバッテリーからの自然発火のリスクを回避するために、

すでにバッテリーモジュールを交換するというリコール対応を発表していたばかりでもあったのです。

つまり、すでにリコール対応が発表されていた68000台という車両に加えて、

さらに追加の車両が、リコール対応をアナウンスされてしまっているということになるのですが、

その今回追加で対象となってしまったのが、2019年から2022年までに生産されたモデル、

つまり、この直近でフルモデルチェンジが行われた最新型のBoltも含めた、合計73000台もの車両が対象となり、

最初のリコールと全く同様に、その欠陥が見つかっている当該のバッテリーモジュールを交換するというリコール対応を取ると発表されています。

Chevy Bolt

したがって、GMが2017年から発売している全てのBolt、合計してなんと14万1000台にも上る、とてつもない台数の電気自動車がリコール対象となってしまい、

こちらの台数に関しては、韓国ヒョンデの電気自動車であるKonaを中心とする、合計82000台もの車両のバッテリーの交換という、

その当時世界最大級のリコールよりも倍近い、まさに世界最悪規模の電気自動車におけるバッテリーリコール案件となってしまったのです。

リコール費用はGMとLGで分担へ

また、その世界最悪規模のリコール案件の規模感について、

もともとGMに関しては、直近の第二四半期の決算発表において、その68000台ものBoltに対するリコール対応のために、

8億ドル、日本円にして880億円程度という、これだけでもとんでもない額の減価償却費を計上していたのですが、

今回の追加の73000台ものリコールによって、そのリコールにかかる費用が10億ドル

日本円にして1100億円という、さらにとんでもない額の出費がかさむ公算ですので、

流石にGMという巨大な企業であったとしても、この出費はかなり痛いのであろうと推測することができそうです。

ただし、今回のバッテリーからの発火事故について、

GM側はその原因を、そのバッテリーを生産しているバッテリーサプライヤーのミスであると指摘し、

今回追加でかかる1100億円ものリコール費用についても、それ相応の補償を要求する考えも示し、

実際問題として、1回目のバッテリー交換リコールにおいては、

そのBoltのバッテリーサプライヤーである、韓国のLGエナジーソリューション側も2億ドル、およそ220億円もの減価償却費を計上してもいますので、

何れにしても、この2回目のバッテリー交換リコールにおける1100億円の費用のうち、幾らかはLG側の負担となる公算となりそうです。

GM&LG Energy Solution

LG製のバッテリーセルは前にも燃えている?

そして、そのバッテリーサプライヤーである韓国のLGエナジーソリューションについては、

今回のGMのBoltという電気自動車だけでなく、

同じく韓国ヒョンデの電気自動車であるKonaやIONIQにも、同じくバッテリーを供給しているのですが、

こちらは以前も解説している通り、全く同様にバッテリーからの発火事故が相次いでいたことによって、

冒頭比較対象としてあげたように、82000台もの車両がバッテリー交換リコールの対象となり、

現在その交換作業が進んでいる最中ともなっているのです。

そしてこちらのKonaの発火原因については、すでに韓国国内の第三者機関の検証によって、

ヒョンデ側のバッテリーマネージメントによるものではなく、LGエナジーソリューションが生産しているバッテリーセルの欠陥であると結論づけられ、

よって、その補償額についても、LG側がそのマジョリティである7割程度をまかなってもいますので、

基本的にはLG側の生産したバッテリーに主たる問題があった、ということなのです。

消火後のKona

つまり今回のBoltの発火事故についても、

GM側のバッテリーマネージメント側の問題ではなく、やはりLG側が生産しているバッテリーそのものに問題がある可能性が否めず、

今回のGMについても、その原因をLG側が韓国国内の工場で生産しているバッテリーセルに欠陥があったと主張し、

現在LG側からの反応は報告されていませんが、もちろん今後第三者機関による調査が進むと、そのどちらに問題があったのか、

個人的には、複数の報道ベースの情報などからも、

やはりLG側の生産しているバッテリーセルの欠陥によるものではないかと推測してはいますが、

何れにしても、詳しい責任の所在、およびそれによる補償の分担も今後決定されるものと考えられます。

バッテリー保証はリセットされる朗報も

ちなみにですが、今回の17万台以上もの全ての車両の、欠陥を抱えているバッテリーモジュールを交換するBoltについては、

2019年度における、アメリカ国内で発生した内燃機関車の発火事故と比較して、

なんと驚愕の35倍もの発火リスクを抱えているという、衝撃のデータも明らかになってしまっていて、

したがって今回のGMに関しては、バッテリー交換のリコール作業が完了するまでは、

充電残量90%以上充電しないように、その充電上限を90%に設定するよう求めながら、

その逆として、充電残量が航続距離にして113kmを下回らないように、より頻繁に充電するように心がけ、

そして、自宅で充電が完了したら速やかに車を車庫の外に出し、夜通しで充電し、その充電中の車両を車庫に放置することを控えるように指示を出しています。

ガレージに駐車中に発火したBolt

ただし、今回のGMに関しては、

そのバッテリーを交換した場合、もともとのBoltの8年16万kmというバッテリーの保証期間を完全にリセットし、

さらに8年16万kmに対応するという、オーナーにとっては不幸中の幸いとも呼べる対応がとられますので、

例えばその発火のリスクによって、今後のリセールバリューへの懸念を心配していたオーナーなどについても、

最低限安心することができる好材料とはなってきそうです。

GMとLGとのパートナーシップに亀裂も?

また、今回のGMとLGエナジーソリューションについては、

現在アメリカ国内において、GM独自のバッテリー技術であるUltium Batteryを生産するためのバッテリー生産工場を、なんと2箇所も目下建設中である、

つまり、今後も緊密なパートナーシップを求められてもいますので、

流石に現在建設中の生産工場については、今後も共同で運営していくものと思われますが、

今後新たに建設することを表明してきた、さらに2つものバッテリー生産工場については、

LG側とタッグを組むのではなく、それ以外のバッテリーサプライヤーとの提携を模索してくる可能性も捨てきれない、とは推測できるでしょう。

何れにしても、合計して14万台以上の電気自動車を、すべてバッテリー交換作業を行うという、

前代未聞、もはや今後数年というスパンでも見ることがないような、史上最悪規模のバッテリーリコール案件ということは、

ただでさえ現在世界的に慢性的な不足状態となっている電気自動車用のバッテリーを、そのリコールのためだけに追加で生産しなければならなくもなりましたので、

その14万台以上ものリコールを完了させるのには、まだまだ時間がかかりそうであるとは感じますし、

その期間の間に、新たなバッテリーからの発火事故が起きないことを祈ることしかできないと思います。

From: GM(Bolt Recall)GM(Q2 2021 earning call)Electrek(all fire incident of Bolt)Chevloret(Bolt Recall Support)

Author: EVネイティブ