【テスラに逆風が吹き始める】4月度の中国市場でモデル3&Yの販売台数が急落 工場拡張計画も頓挫か?

テスラ

圧倒的な成長力で中国EV市場を席巻中

直近である4月度の中国市場における販売台数が急落してしまい、いよいよテスラの需要が限界点を迎えた可能性があると一部のメディアが指摘し始めました。

まず今回の中国市場におけるテスラに関してですが、一昨年である2019年末についにテスラ初のアメリカ本国以外の大規模な海外工場であるギガファクトリー3が完成し、それによって、昨年である2020年の1月から、ついに世界で最も売れている電気自動車の称号を獲得しているミッドサイズセダンのモデル3の納車をスタートさせ、その生産台数を順調に伸ばしつつ、

中国国内の需要だけでなく、中国国外、特にヨーロッパ市場や我々日本市場を含む右ハンドル市場にも輸出をスタートさせるなど、その世界で最も人気があるモデル3の需要を満たすべく爆速でその量産体制を増強していたのですが、

さらにその上海に位置するギガファクトリー3においては、中国市場だけにかかわらず世界的に人気のセグメントであり、すでにアメリカ国内においてはモデル3よりも多い販売台数を達成してしまっている、ミッドサイズSUVであるモデルYの生産を2020年末からスタートさせながら、今年である2021年の1月中旬から、実際に納車をスタートさせるという、とにかくこのように中国のギガファクトリー3に関しては、テスラの歴史上最も巨大な工場になるために爆速で成長を続けているのです。

モデルY納車式 From: Tesla

そして、その中国テスラの成長については、特に直近である3月度において最高潮に達し、その中国市場における販売台数がこれまでの数値をぶっちぎりで更新し、大台の35000台以上という圧倒的な販売台数を達成することになりましたので、

最直近である4月以降に関しても、その販売台数がさらに伸びていくものだと多くのアナリストたちも考えていましたし、私自身もその4月度から始まる第二四半期というのは、テスラ史上最高の販売台数を余裕で更新してくるものだとも思っていました。

4月度の販売台数は前月比-67%と急落

しかしながら、その中国市場におけるテスラについて新たに明らかとなってきたことというのが、そのさらなる販売台数が期待されていた4月度の中国市場における販売台数が、なんと11671台と、その最高販売台数を記録していた3月度と比較して、衝撃の67.1%の減少というにわかに話信じられない数値がメディアの間を飛び交っていて、

実は一部メディアの勘違いで、中国市場における販売台数は当初2万5845台と報道され、その減少率は27%と、もちろんそれでもかなりの減少幅ではあったのですが、その2万5000台という数値というのは、我々日本市場を含む右ハンドル市場に輸出した分の台数を含んでいた数値でありましたので、グラフで示している中国市場における販売台数というのは、その右ハンドル市場に輸出した台数であった14147台を差し引いた11671台ということになり、したがってその販売台数が明らかに低下してしまっているのです。

ただし、この大きな数字の落ち込みについては正確に数値を解読する必要があり、まず先ほども少し説明していますが、この中国市場で生産されているモデル3に関しては特に各四半期の最初の月に、右ハンドル市場にかなりの台数を輸出している状況ともなっていて、今回問題となっている4月度に関しては、中国市場における販売台数よりも多い、14000台以上もの台数を輸出している状況であり、

したがって、4月度において中国上海工場で実際に生産された車両台数というのは、この両者を合わせた合計25845台ということになり、確かに前月である3月度と比較してしまうと下落トレンドであることには変わらないのですが、例えば同じように比較することができる、昨年である2020年の12月度と2021年の1月度の販売台数を比較してみると、やはり同じような減少トレンドであることには変わりがないのです。

各四半期の最初の月(1/4/7/10月)は中国国内の販売台数は減少傾向

4月は2倍の台数を右ハンドル市場に出荷&モデルYの生産ライン停止?

むしろ逆に海外市場分の輸出量にフォーカスしてみると、比較すべき1月度における輸出量は、テスラ関連のデータを精度高く予測しているインフルエンサーによれば、概ね8000台程度でしたので、つまり、四半期毎の最初の月において海外輸出をほぼ倍にしていることになり、特に海外需要が増大していることを受けての、中国市場分の割り当ての相対的な減少であるとみることも可能であり、

よって今回の販売台数の大幅減というのは、特に直近で様々なメディアが悲観的に取り上げているほどの大ごとではない、というのが現状の個人的見解とはなります。

Tesla Model Y

さらに、こちらは確定した情報ソースではないものの、実は上海工場で生産されているミッドサイズSUVのモデルYに関しては、その4月中に、生産ラインの改修のためにおおよそ2週間程度、その生産を一時中断していたのではないかという情報が存在し、今だにモデル3とモデルYの、それぞれの販売台数の詳細がアナウンスされていませんのでなんとも言えないということを前提としても、

特におそらくモデルYの生産台数が直近の3月度と比較しても、おおよそ半分程度、つまり5000~6000台程度の販売台数になってしまっていることが、その中国テスラの販売台数全体に影響を及ぼしてしまっていると考えられるのです。

上海工場の拡張計画は頓挫?

ここまでは、現在その販売台数の減少で大きな話題となってしまっている中国市場におけるテスラに関して、個人的には特に問題視するような数値ではないのではないかという独自理論を展開してきたのですが、その中でも同時に懸念点も存在していて、

特に重要なニュースというのが、実は以前の動画において、その上海工場の隣に位置する新たな巨大な土地をテスラ が取得し、すでに工事を進めているのではないかという一件を取り上げていたのですが、こちらはロイターによれば、その計画が一旦中断されてしまったと報じていて、200エーカーという東京ドームおよそ17個分という広大な土地に、なんとモデル3の生産工場を追加で建設する計画であったそうなのです。

From: Tesla

というのも、当初考えられていた計画というのはモデル3のエントリーグレードであり、私自身も所有しているスタンダードレンジ+の生産を、現状アメリカのフリーモント工場と中国の上海工場両方で行なっている状況から、なんと上海工場に一元化して、アメリカ市場分のスタンダードレンジ+も中国から輸入するという方式を採用するという計画だったそうで、

その分その他のグレードであるロングレンジやパフォーマンスグレードの生産を、アメリカのフリーモント工場で集中させ、それをアメリカ国内以外の市場にも輸出していくという、テスラが今までこだわっていたローカライゼーションという考えと一見反する計画ですので、個人的にはこの情報には懐疑的ではあるのですが、

スタンダードレンジ+については、LFPと呼ばれる、アメリカ市場で生産されているスタンダードレンジ+に採用されているバッテリーとは異なる種類のバッテリーセルを採用し、こちらは中国のバッテリーサプライヤーであるCATLがサプライヤーとなっていますので、したがって、そのより安価なバッテリーセルを採用し、より安価に製造することができる中国製のスタンダードレンジ+であれば、仮にアメリカ市場に輸出したことによる輸送費や関税などを考慮したとしても、中国での一括生産の方がコストパフォーマンスが高いという判断であったのかもしれません。

しかしながら、今年である2021年の初めまで就任していたトランプ前大統領時代において、中国製の車両をアメリカ市場に輸入する場合、25%もの高い関税を課す決まりを作っていて、その後に就任したバイデン政権においても対中強硬路線を継承し、その関税のパーセンテージが下がる可能性がなくなってしまっているどころか、今後さらに関税以外でも制裁を加えてくる可能性もあるため、

今回テスラ側が、その中国市場におけるモデル3の増産計画を取りやめたのではないか、という経緯となっているのです。

最も注目すべきは、ズバリ6月度の販売台数

何れにしてもこのように、その中国上海に位置するテスラの車両生産工場であるギガファクトリー3が創業してからというもの、その販売台数をうなぎのぼりで成長させ続けてきた中国テスラでしたが、この最直近である4月度の国内販売台数はというと、前月と比較しても、その販売台数は圧倒的に減ってしまっていて、

特に現在巨大な中国市場への潜在的需要を見込んで、巨額の投資が集まっている状況において深刻な懸念が表明されてはいるものの、今回の販売内訳を見ても、その海外市場への割り当てを倍近くにまで増やしていますので、その分相対的に中国国内への割り当てが、一時的に減少してしまっていると捉えることも可能ですし、

しかもその上、現在テスラの最も売れ筋商品であり、中国国内においても人気のセグメントであるミッドサイズSUVのモデルYの生産が、ライン改修のため2週間ほどストップしていた可能性があり、したがって、この点を総合的に勘案してみれば、今回の中国国内の販売台数の減少というのは、取り立てて深刻な懸念を表明するまでには至らないのではないかとは感じます。

Tesla Giga Factory 3

ただしそれと同時に、その上海工場の生産キャパシティの大幅増強のための土地取得を断念したのではないかという報道もされ始め、特に昨今の米中貿易戦争による地政学上のリスクからも、中長期的に見た中国市場における成長戦略の見直しも迫られている可能性も十分予測できますので、

その上海工場の拡張工事断念の是非を始め、今後数カ月の中国国内の販売台数、特にこの第二四半期の最終月である6月度については、海外輸出をせずに純粋な中国国内の販売台数が結果として現れてもきますので、

その6月度の販売台数が、3月度の35000台オーバーという数値を上回ることができるのかという点に注目していきたいと思います。

From: Reuters

Author: EVネイティブ