【ミニバンもEVシフト】アルファードの半額でこの質感って、、 トヨタのドル箱商品「新型アルファード」を超える、中国製高級ミニバンEVたち

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日本国内で新型アルファードが発表された一方で、実は中国市場においては、日本の3倍というとんでも価格で販売されているにも関わらず、カルト的な人気を博しているという、その知られざるトヨタのドル箱商品について、

そのアルファード越えを虎視眈々と狙う中国メーカーの高級ミニバンEVの販売動向とともにそれぞれ解説します。

新型アルファードが格安と言える理由とは

今回トヨタ・アルファードについては、フルモデルチェンジが日本国内で実施されました。全長がさらに引き延ばされたことにより、車内スペースが成功裏に拡張されています。空調システムのスイッチ類などは「スーパーロング、オーバーヘッドコンソール」と名付けられ、すべて中央に集約されています。

乗り心地についても、サスペンションシステムの刷新やシートに低反発のパッドを採用することで、乗員に伝わる振動が従来比で3分の1にまで削減されています。燃費性能についても、最高出力184kWを実現しながら、エグゼクティブラウンジでは以前採用されていなかった二輪駆動方式が追加され、日本のWLTCモードにおける燃費性能が17.5km/Lを実現しています。

これらの改善により、日本で圧倒的に人気のあるこのミニバンがモデルチェンジされ、販売台数がさらに増加することを期待することができると思います。

一方で、大きな話題となっているのが、価格設定の観点です。先代モデルはエントリーグレードが概ね350万円からでしたが、新型はなんと540万円からと、約200万円もの価格上昇が見られます。特にハイブリッドモデルは620万円からと、ガソリンモデルと比較しても高額です。

もちろん、内外装の質感は大幅に向上しており、シンプル化されたZグレードやエグゼクティブラウンジのラインナップだけでなく、兄弟車のヴェルファイアについても上級グレードが揃っていますので、一概に比較することは難しいです。上級グレードの販売が落ち着いた後には、さらなるエントリーグレードが追加されることも予想されます。

しかし、それでもこの価格設定により、アルファードを購入できるユーザーはかなり限定されてしまうと考えられます。

なお、この価格設定は、日本市場だけでなく中国市場においても注目を集めています。日本では数多くのミニバンがありますが、海外ではあまり人気がありません。しかし、中国や東南アジアでは富裕層を中心にアルファードなどが人気となっており、中国市場では先代モデルがなんと83万9000元、約1656万円からのスタートとなっていました。そして、今回のフルモデルチェンジモデルはさらに6万元、約120万円ほど値上げされ、1775万円からのスタートとなります。これは日本の850万円からのスタートとは大きな違いです。

中国市場における価格設定の一因としては、輸入車に対する関税があります。現在、中国国内で輸入車を購入する際には一律15%の関税が課せられます。この関税は、中国政府が自国の自動車産業を育成したいという意図から導入されたものです。その結果、多くの自動車メーカーが中国国内に生産工場を設置し、現地雇用を創出することで、中国の自動車産業も力をつけてきました。

この関税の影響は、メルセデスEQS、BMW i7、iX、ポルシェ・タイカン、テスラモデルSとXなどの電気自動車、そしてメルセデスSクラス、アウディA8、BMW7シリーズ、ポルシェ、ベントレーなどの内燃機関車、さらにはアルファードやレクサスのLMなど、15%の関税が適用される輸入車全般に影響を及ぼしています。それでも、アルファードが日本よりも高価である理由の一つとして関税が挙げられますが、それだけでなく、アルファードブランドが中国国内で相当に価値を持っていることを示しています。

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トヨタのドル箱商品と中国製高級ミニバンEVが激突へ

さて、中国市場のミニバンセグメントの人気車種の販売台数を見てみましょう。アルファードはここ数年間、月間2000台程度の販売台数を維持しています。一方、ビュイックのGL8は月間1万台以上を売り上げており、その販売台数から見るとアルファードはさほど大きな数字には見えません。しかし、価格を比較すると、GL8は日本円で約400万円台で購入できるのに対し、アルファードはそれの3倍以上となります。これを考慮に入れると、高級ミニバンとしてのアルファードの人気が明らかになります。

例えば、アルファードの平均販売価格が1800万円で、年間2万4000台が売れたとすると、年間の売上は約4320億円となります。これをトヨタの2022年度の売り上げ、約37兆円と比較すると、中国国内のアルファードの売り上げだけで全体の約1.2%を占めています。これは、アルファードがトヨタの中国市場における重要な商品であることを示しています。

一方で、現在中国市場のミニバンセグメントにおいては、ある変化が起き始めています。それは、電気自動車のミニバンが多数市場に投入され始めているということです。

ミニバンの主なターゲット層はエグゼクティブ向けのショーファーカー、または子供を持つファミリーです。これらのグループに共通して求められる価値は、収納スペースを含めた車内の広さ、静粛性や振動の少なさといった快適性です。そして、これらの価値を高レベルで実現できるのが電気自動車です。内燃エンジンを搭載しないことで、今まで以上に自由なレイアウトを実現でき、エンジン音や振動も発生しないためです。結果として、ミニバンと電気自動車は非常に相性が良い組み合わせとなります。

このため、中国の自動車メーカーはいち早くミニバンEVを市場に投入しています。

具体的には、まずVoyahというEV専業ブランドのモデル、Dreamer EVを紹介します。このモデルはバッテリーEVとPHEVの両方をラインナップしており、特にバッテリーEVは最大605kmの航続距離を実現しています。前後にモーターを搭載することで、0-100km/h加速も5.8秒と、2.5トンを超える大型ミニバンとしては驚異的な性能です。さらに、4人乗りの上級グレードは内装の質感が極めて高く、販売開始から1年経過した段階で、月間2000台近くと、アルファードに匹敵する販売台数を達成しています。

次に紹介するのは、2023年に納車が開始されたジーリーのEV専業ブランド、Zeekrからの2車種目のEV、009です。この車はバッテリーEVのみをラインナップしており、中国CATLが開発した最新のQilin Batteryを搭載しています。この結果、航続距離は驚異の822kmと、ガソリン車と同等の距離をカバーします。また、前後にモーターを搭載しているため、0-100km/h加速時間は驚異的な4.5秒です。インテリアの質感も非常に高く、ファミリー層にも人気があります。しかし、最も注目すべきはその価格です。最上級グレードで140kWhバッテリーを搭載し、航続距離が822kmであるにも関わらず、価格は58万8000元(日本円で1160万円)となっています。これはアルファードと比較すると半額以下となり、驚異的なコストパフォーマンスを実現しています。実際、販売台数もすでに月間2000台以上と、アルファードよりも好調です。

そして、中でも販売台数の伸びが異次元のスケールを見せ始めているのが、BYDの高級EV専業ブランド、Denzaから発売されているD9の存在です。D9については、バッテリーEVとともに、BYDの独自PHEVシステムであるDMシステムを採用しています。

ピンクで示された販売台数をご覧いただければわかる通り、10月の発売以降、販売台数が急速に拡大し、驚くべきことに3ヶ月連続で販売台数1万台を突破しています。ミニバンセグメントの王者であったGL8と比較しても、すでに同等のレベルを実現しています。

特に人気を博しているのが、PHEVでありながら40kWhという大容量バッテリーを搭載し、そのEV航続距離が190kmを実現しているモデルです。これは、いまだにバッテリーEVの運用に不安を抱くファミリー層などを中心に、人気が高まっている理由です。

また、D9については、内外装の質感に一切の妥協が見られません。今回のアルファードと比較してみても、全く遜色がないと感じます。さらにD9は、センターコンソールに標準装備として冷蔵庫が内蔵されており、まさにショーファーカーとしても非常に満足度の高い一台となっています。

さらに、Denzaはすでにショールームやサービスセンターを急速に拡大中です。つい最近になって、なんと5500平方メートルにも及ぶ最大級のショールーム、兼サービスセンターを北京にオープンしました。そして、この北京という一都市だけでも、2023年末までに16のストアを開業する計画を明らかにしています。これは高級ブランドとして、ユーザーの満足度向上への強いコミットメントを示しています。

ですから、中国市場においてミニバンEVが急速に販売台数を伸ばしている理由は、そのEV性能とともに、その内外装の質感がすでに今回のアルファードを超えるレベルを実現しているからなのです。

今回、フルモデルチェンジバージョンが発表されたアルファードについては、我々日本市場で爆売れすることは間違いありませんし、日本の倍以上の値段で販売されている中国市場においても非常に期待されている車種です。

しかしながら、この中国市場では、非常に質の高い電気自動車バージョンのミニバンが続々と登場し、ミニバン需要が少なかった中国国内でもかなりの販売台数を達成しています。

中でも、現在中国でトヨタを超えて最強の自動車メーカーであるBYDの高級ブランド、DENZAから発売されるD9は、まさに人気沸騰中です。アルファードの半額でありながら、アルファードよりも所有体験が優れているという、実際の中国のオーナーからのコメントを見ることができます。

ですから、1800万円もするアルファードが、これまで通り中国で人気を維持し、トヨタのドル箱商品となるかどうかは疑問です。

トヨタについては、PHEVバージョンも追加する予定ですが、激化する中国のミニバンセグメントにおいて、アルファードがどのような評価を受けるのか、今後の動向に注目が集まっています。

From :ToyotaYiche

Author: EVネイティブ