上海オートショーにおいて、中国EVスタートアップの筆頭候補であるXPENGは、新型EVであるG6を世界初公開しました。G6は、Xpengの次世代EV専用プラットフォームを採用し、最大480kWの超急速充電に対応しています。また、前後ボディのアルミダイキャストや市街地における自動運転支援など、2023年最も先進的なEVの一台として期待されています。
2022年は販売失速
Xpengは2014年に設立された中国のEVスタートアップで、中国のEVスタートアップの中で有望視されていましたが、最近の販売状況を見ると、その地位が揺らいでいることがわかります。
2014年に設立され、2018年には初の量産車G3を発売したXpengは、その後2020年には好評を博したスポーツセダンのP7を発売しました。特にP7の販売が好調であったことから、その成長速度を加速させることに成功しました。
しかし、P7に続く第3のEVであるP5が販売不振に陥っていることが、Xpengにとって大きな課題となっています。P5は、P7よりも一回り小さいミッドサイズセダンで、そのコストパフォーマンスの高さから通常であれば販売台数をさらに稼ぐエントリーモデルになるはずでしたが、販売が思わしくない状況です。
これを受けて、フラグシップSUVであるG9でP5の販売失速を挽回しなければならない状況にありますが、G9の販売も急減速しています。中国市場全体が自動車マーケットの減速を経験していることを考慮しても、Xpengが設定した目標であるアウディQ5の販売台数を超えることは難しい状況にあるようです。
そのため、Xpengにとっては次の第5車種目のEVを成功させることが非常に重要となっています。新型EVであるG6が、Xpengにとって販売台数を回復させるきっかけとなることが期待されており、今後の動向が注目されます。
800Vシステム&アルミダイキャスト
新型EV G6は、Xpengにとって非常に重要なモデルとなります。G6はミッドサイズ級のSUVで、Xpengがこれまでのプラットフォームを刷新し、新世代のEVプラットフォームであるSEPA2.0を採用しています。このプラットフォームは、最大400kW以上の充電出力に対応し、800Vシステムを標準で搭載。わずか10分間の充電で航続距離300kmを回復させることが可能です。
また、バッテリーとシャシーを統合したCIB技術により、垂直方向のスペースが5%増加し、車内空間が広がります。さらに、最新型ヒートポンプ式空調システム「X-HP」により、冬場の航続距離が15%改善し、充電スピードも90%向上します。
このモデルでは、800Vシステム対応の新型パワートレイン「X-power」が採用され、全体の効率性が92.0%を達成。この効率性は、中国BYDの90.5%およびテスラの91.4%を上回るとされています。
G6はまた、前後アンダーボディのアルミダイキャスト一体成型を採用し、ボディ剛性を83%向上させ、ねじり剛性を42000ニュートンに達成。車両重量も17%の軽量化に成功し、電費性能も改善されています。
さらに、アルミダイキャストによる一体成型により、前後アンダーボディがわずか2ピースに簡素化され、生産ラインが大幅に簡素化されることで生産時間が短縮され、コスト低減にも貢献しています。
SEPA2.0プラットフォームは、EV性能の向上だけでなく、1800ミリから3200ミリの幅広いホイールベースに対応し、Xpengの全ての車両に適用可能です。さらに、中央集権的なソフトウェア制御により、無線アップデートの頻度を現状の300%に増加させ、開発費を半減することができます。
新世代プラットフォームを導入することで、新型モデルの研究開発期間が20%短縮され、より早く市場に投入できます。また、80%のコンポーネントが共有可能となり、量産コストを大幅に低減できます。
Xpengは、プロダクトライフサイクルの短縮と開発コストの削減を目指し、新型モデルを迅速に市場に投入しようとしています。P5とG9の失敗を経験したことから、プロダクトサイクルを早めることが重要だと考えられています。
モデルYを超えるEV性能&コスパ
G6は、Xpengの販売台数を回復するだけでなく、最新テクノロジーが詰め込まれた最高性能のEVとして、競合メーカーに打ち勝たなければならない重要な役割を担っています。
XpengのG6は、テスラモデルYと競合する車種で、全長4753ミリ、全幅1920ミリ、全高1650ミリ、ホイールベース2890ミリと、モデルYと非常に似たサイズ感があります。これからも、XpengがモデルYを開発のベンチマークにしていることがわかります。
G6の価格設定に関しては、一部メディアでリークされているものの、Xpengはこれを否定しています。しかし、リーク情報は観測気球である可能性があり、CEOのHe Xiaopengは、価格が20万元から30万元の間に設定されると述べています。
G6は66kWhのLFPバッテリーと87.5kWhの3元系バッテリーの2種類をラインナップし、後輪にモーターを搭載したシングルモーター仕様と前後にモーターを搭載したAWD仕様を設定しています。AWDグレードでは、20インチのミシュランパイロットスポーツEVを装着し、EV専用タイヤによって電費性能が向上しています。
G6のAWDグレードは、0-100km/h加速時間が3.9秒で、モデルYパフォーマンスに匹敵する動力性能を持っています。重心高もSUVとして非常に低い540mmで、驚異的なねじり剛性とともに、ハンドリング性能も期待できるでしょう。
車両重量も注目に値します。エントリーグレードは2トンを切り、AWDグレードも2.1トンに収まっています。モデルYと比較して、バッテリー容量の差を考慮すると、SEPA 2.0採用による軽量化努力が見て取れます。
効率性を最大限活かすため、Cd値も0.248とSUVとして優秀です。さらに、電動式リアウィングを搭載しており、高速域でダウンフォースが得られます。これらの最適化により、モデルYと比較しても、どのスペックも遜色がなく、むしろ上回るEV性能を実現しています。
値段設定はまだ正式には公開されていませんが、20万元から30万元の間であるとアナウンスされています。リーク情報の値段設定は現実的とも考えられます。
最上級グレードを比較すれば、モデルYロングレンジと比べて航続距離は同等、充電性能や動力性能は上回っています。それにもかかわらず、G6の方が安価で購入できることが確定しており、コストパフォーマンスの観点からも、G6はモデルYよりも優れていると言えるでしょう。
今回のXpeng G6は、低迷しているXpengの販売台数をV字回復させるという重要な目標と、SEPA 2.0プラットフォームを採用し、EV性能で勝負しなければならないという2つの至上命題を背負っています。G6はXpengの社運をかけた本気のEVであり、その実力は確かです。
ターゲット層は、スマートとスポーツをキーワードに、30~35歳の小家族を想定しています。これはXpengが大ヒットを記録したP7と同じ層を狙っており、Xpengの原点に立ち返ったモデルと言えます。
値段設定や販売台数がXpengの立て直しにつながるかどうかは、今後の展開を見守る必要があります。Xpengは、2030年までに残る自動車メーカーが8社程度になると予測し、その1社になるために、EV競争だけでなく、自動運転技術にも力を入れています。
すでにテスラが北米で展開している市街地向けの自動運転支援と同様の機能を中国国内で展開しており、Xpengの自動運転技術力も注目に値します。このように、Xpengの最新動向は、今後も目が離せない状況が続くでしょう。
From: Xpeng(G6)、Xpeng(SEPA2.0)、Dongchedi(値段リーク情報)
Author: EVネイティブ