イーフュエルの無意味さを指摘するフォルクスワーゲンブランドの主張とEVシフト加速の動き

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EVシフトを高らかに宣言しているフォルクスワーゲンブランドのトップが、欧州委員会が策定した、e-fuelの存続という方針について、全くナンセンスであり、フォルクスワーゲンにとって不要なノイズであるという立場を表明し、2033年までに欧州で発売する新車を、100%バッテリーEVにする方針を改めて強調してきたという、

欧州の手のひら返しという、日本での報道とは異なる温度感について、その加速する欧州の電動化動向とともに解説します。

まず、今回のフォルクスワーゲンの最新動向についてですが、欧州の自動車メディアAutomotive News Europeが、フォルクスワーゲンブランドのトップである、トーマス・シェーファーに対して行ったインタビュー内において発言された内容であり、

そもそも論として、現在のフォルクスワーゲンの経営体制についてですが、2022年の8月までは、本チャンネルにおいても度々取り上げていた、そのEVシフトに積極的な姿勢を表明していたディース会長がトップを務めていたわけですが、

9月からはポルシェブランドのトップを務めていたオリバー・ブルームが、フォルクスワーゲン全体のトップを兼任することになっていたわけであり、

さらに、フォルクスワーゲンブランドのトップについても、元々はディース元会長が兼任していたものの、すでに、ラルフ・ブランドシュテッダーが後任を引き継ぎながら、

7月からは、スコーダブランドのトップであったトーマス・シェーファーが昇格した格好、ラルフ・ブランドシュテッダーについては、現在不振が続いている中国事業を立て直すために中国事業のトップを務める形となりましたので、

いずれにしても、ディース元会長の事実上の更迭によって、フォルクスワーゲングループの経営体制も刷新されているという状況となっています。

Herbert Diess &Ralf BRANDSTAETTER

e-fuelはナンセンスであり不必要なノイズ

フォルクスワーゲンブランドのトップであるトーマス・シェーファーは、ブルーム会長とは異なる立場を表明しており、e-fuelに対して懐疑的な見方を持っています。彼はe-fuelに関して大きな誤解があるとし、物理学上、EVに取って代わるものではないと主張しています。また、フォルクスワーゲンブランドとしては、欧州委員会のイーフュエルを認める決定についても不必要なノイズとして扱ってきたとしています。

さらに、トーマス・シェーファーは、ブルーム会長がイーフュエルを推進するためにロビー活動を行っているという説について、ブルーム会長が裏で手を引いているわけではないと強調しています。これにより、フォルクスワーゲンブランドとしては、イーフュエルを推進する意向がないことを示しています。

フォルクスワーゲングループには、大衆車ブランドを筆頭にクプラやスコーダ、プレミアムブランドにはアウディやベントレー、スポーツブランドにはポルシェやランボルギーニ、ブガッティなど、多岐にわたるブランドが存在しています。そして、以前に解説した通り、イーフュエルの可能性を残しておきたいブランドはポルシェやランボルギーニなどのハイエンドスポーツブランドであるとされています。つまり、ブルーム会長はポルシェのトップとして、内燃機関車に乗れる可能性を残したいという意向があるとされています。

以上のように、トーマス・シェーファーやブルーム会長の発言内容や立場を考慮することが重要であり、フォルクスワーゲン全体の経営体制や各ブランドのポジションを理解することが、フォルクスワーゲンがイーフュエルを推進しているのかどうかを正確に判断する上で必要な前提条件となります。

Thomas Schafer

フォルクスワーゲンは、2033年までに欧州で生産するすべての車両をバッテリーEVにシフトするという大きな方針を固めており、2022年末までに新型T-ROCを含む内燃エンジンの開発を終了し、2033年まで改良を加えるだけで生産を続ける予定です。また、新車販売のバッテリーEVの比率を70%に引き上げる計画もあります。

プレミアムブランドであるアウディも、2022年シーズンにおいて11万8000台以上のバッテリーEVを販売し、前年比で42.8%の成長を達成しました。アウディはすでに2025年までにバッテリーEVの販売シェア率を33%以上にする目標を立てており、Q8 e-tron、Q6 e-tron、A6 e-tronなどの新型EVを投入する予定です。また、2033年までには内燃機関車の生産を終了する方針を表明しています。

ポルシェも注目すべきブランドであり、2022年にはタイカンの生産キャパシティの減少によって販売台数が減少しましたが、2023年末ごろには初めての大規模なモデルチェンジが予定されており、販売台数の増加が期待されています。また、2024年中にはポルシェの全車種がバッテリーEVになる予定であり、イーフュエルの容認が決定された後もバッテリーEVへの全面移行を変える予定はないとされています。

これらのブランドは、イーフュエルの容認が決定された後も、EVシフトを加速させる方針を示しており、バッテリーEVの販売比率を引き上げるなど、持続可能なモビリティへの取り組みを進めています。

このようにして、今回フォルクスワーゲンブランドのトップであるシェーファー氏が、 欧州委員会によるイーフュエルの容認という決定に対して、 フォルクスワーゲンブランドとしては、完全に無意味な存在であり、 今後さらにEVシフトを加速させていく上で、不要なノイズとさえ主張してきたという内容に関して、 現在欧州の自動車動向について、日本を筆頭に大きな誤解がある点というのが、 フォルクスワーゲンを筆頭とする欧州メーカー勢が、これでEVシフトを減速させる、 掌を返そうとしているという主張なわけですが、

その欧州メーカーの中の最大ブランドであるフォルクスワーゲンブランドでさえ、 2033年までには欧州域内での内燃機関車の生産を完全に終了する方針をあらためて主張してきたわけですから、 やはりイーフュエルの立ち位置というのは、 フォルクスワーゲングループ内で言えば、 あくまでもポルシェ911やランボルギーニなどのごく一部に限定、

電動化とデジタル化のために、2023年から2027年までの5年間で、実に17兆8300億円もの巨額の投資を行うことも同時に発表してきている、

いずれにしても、フォルクスワーゲングループについては、EVシフトの手のひら返しをしてきているのではなく、 むしろ投資額を増やしてEVシフトの動きを加速させようとしている、

イーフュエルの手のひら返しという幻想に騙されてはいけない、ということですね。

Author: EVネイティブ

From: Automotive News Europe