【水素自動車に”ミライ”無し】トヨタの新技術《水素エンジン》に隠された不都合な真実

トヨタ

今回は、トヨタがついに水素エンジン車という、既存の内燃機関車のプラットフォームも活用できる新たな種類の車両を開発し、その車両を使って、過酷な24時間耐久レースに参戦しましたが、

しかしながら、その水素という次世代の環境対策車という名目とは相反する、不都合な真実も明らかになってきているということについて、徹底的に解説します。

全方位戦略と言いつつも、、

まず、今回のトヨタに関してですが、現在世界最大級の自動車グループを構成しながら、それと同時に、業種を限らず日本最大の企業ともなっていて、

まさに日本経済を下支えしていると言っても過言ではない、世界に誇る企業なのですが、

このトヨタに関しては、現在自動車産業だけにとどまらない脱炭素化の動きにおいて、世界的な潮流でもある完全な電気自動車へ注力するという動きには消極的であり、

まさにトヨタが目指してきた経営戦略である全方位戦略を体現するために、

この脱炭素化という100年に1度の大変革においてでも、電気自動車以外にも、水素燃料電池車であったり、特に自らが得意なハイブリッド車に関しても、

海外ではセルフチャージングと名付けて、電気自動車の1つのカテゴリーとして販売しようともしているのです。

しかしながら、その脱炭素化のために、電気自動車に対してとてつもなく莫大な投資を行い始めてもいる、特に現在バイデン政権が誕生したアメリカ国内において、

そのような電気自動車への性急な転換について待ったをかけるような、ロビー活動を行っているという事実も明らかになってきていたり、

イギリス国内においては、2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止、そして2035年までに、トヨタの得意なハイブリッド車の販売を禁止するという決定に反対するためのロビー活動を行っていたりと、

このように、全方位戦略と言いながら、実は自分たちが得意とするハイブリッド車の販売を続けたいというのが本音なのではないかという指摘が上がり、

したがって、海外の主要機関投資家たちが、次々とそのような電気自動車を阻害するようなロビー活動をやめるよう、トヨタ側に圧力をかけているという、かなりショッキングな報道も飛び出していて、

これらのトヨタの一連の流れについては、個人的にはかなり批判的な立場で論じてきました。

ちなみにですが、そのようなアメリカやイギリスにおけるロビー活動に関しては、

現状バイデン政権は、20兆円にも昇る圧倒的な電気自動車への投資、そして、イギリス市場においても、ハイブリッド車の販売禁止もしっかりと盛り込まれてしまいましたので、

トヨタ側のロビー活動の努力が成就することはなかった、ということですね。

EVのポテンシャルにハイブリッドが勝ることはない

本チャンネルにおいては繰り返しの説明とはなりますが、ハイブリッド車というのは電気自動車ではないというのが、世界のスタンダードな見方であり、

ハイブリッド車は既存のガソリン車と全く同様にガソリンを使用して走行することには何ら変わらず、

対する電気自動車に関しては、グリッドの電力を充電して走行することができますので、

そのグリッドを、現在世界的な脱炭素化の一環で、急速に移行が進んでいる再生可能エネルギーでの発電を増やしていけばいくほど、

現状においてでも電気自動車の方が同セグメントの内燃機関車よりもCO2排出量が低い状況でありながら、その排出量をさらに削減することができ、

しかもその上、すでに街中を走っている電気自動車に関しても、その充電される電気の脱炭素化が進めば進むほど、そのCO2排出量は加速度的に減っていく、

逆に、ハイブリッド車を含む全ての内燃機関車は、残念ながら新車で購入した段階が最も燃費性能が高く、その後の経年劣化によって、その燃費性能は徐々に悪化、

少なくとも電気自動車のように、車両を購入した後も、CO2排出量の削減に貢献することは不可能なのです。

EVの持つ脱炭素化のポテンシャルはあまりにも大きい

水素燃料電池車はEVの一種?

それでは、トヨタが開発を進めている水素燃料電池車はどうなのかという疑問に関してですが、こちらは以前の動画でも解説してはいるのですが、

そもそも水素燃料電池車、別名FCEVというのは、搭載された水素タンクに充填されている水素を空気中に存在している酸素と反応させて、電気を生成し、

その電気を、搭載されているバッテリーに充電しながら、その電気を使って、モーターを動かして走行するという仕組みとなっていますので、

つまり水素燃料電池車とは、水素を燃料にして、電気で走行する、

故に、電気自動車の一種である、ということで、

よく、水素を燃料にして、内燃機関車のように、二酸化炭素を排出する代わりに水を出して走行する、というようなイメージを持たれている方がいらっしゃると思いますが、

実際は、かなりイメージが違うということがお分かりになると思いますし、

実は今回フォーカスしたい、トヨタが開発した水素エンジン車は、こちらのイメージに近い、ということになります。

新型ミライの構造

水素燃料電池車の変換効率は「かなり悪い」

そして、そのトヨタが発売しているミライをはじめとする水素燃料電池車と、それとともに次世代環境車と言われている電気自動車を、大きく2つの点において評価していきたいのですが、

まずはじめに、環境性能という側面に関してですが、こちらの、再エネで生成された電力を使用した際の、実際に車両側で使用されるまで、

つまり、いわゆるWell to Wheelsである一連のエネルギー変換効率を、フォルクスワーゲングループが調査した結果を見ると、

電気自動車は、トータルで76%という効率を達成しているのに対して、

水素燃料電池車の場合、発電された電力を使って水を電気分解し、その分解された水素を超高圧に圧縮して保管し、それを実際に充填する水素ステーションまで輸送し、

さらにその水素を水素燃料電池車に充填するために、さらに電気を使って高圧に圧縮し、そしてその車内に充填された水素を、空気中にある酸素と反応させて、電気と水を作り出し、

その電気を車内にある小さなバッテリーに充電しながら走行すると、そのトータルのエネルギー効率は、なんと30%にまで低下してしまうという、衝撃の結果が出ていて、

ただしこちらは、現在電気自動車を強力に推進しているフォルクスワーゲングループの調査結果ですので、Transport&Environmentという第3者機関の調査結果を見てみると、

そのWell to Wheelsにおける効率性において、電気自動車に関しては、2020年現時点において77%を達成しているのに対し、水素燃料電池車は33%という効率にとどまり、

やはりフォルクスワーゲングループの調査結果と同様に、そのあまりにも複雑な行程であるがゆえ、全体としてのエネルギー効率があまりにも低下してしまっているのです。

しかもその上、よくある批判として、将来的な技術革新やさらなる効率化によって、そのエネルギー効率は向上するだろうという希望的観測なのですが、

その将来である2050年におけるエネルギー効率を比較してみても、電気自動車は81%というエネルギー効率を達成しているのに対して、

水素燃料電池車は42%と、そのエネルギー効率は、30年経ったとしても半分にすら達していない、

つまり、水素燃料電池車の場合、せっかく再生可能エネルギーによって生成された電力を、30年後という将来においてでも、実際に車両側で消費するまでに、58%も捨ててしまっているということになり、

むしろ同じ電力量であれば、電気自動車を2台近く走らせてしまうことができる電力を生成していることと同義でもありますので、

やはりこの環境性能という観点では、将来においてでも水素燃料電池車は電気自動車に勝ることがないのです。

水素を充填するためだけの電力量でモデル3をフル充電できます

ちなみに、さらにダメ押しすると、よくミスリーディングなCMなどで、水素はこの世界のいたる所、あるゴリラが主演しているCMに関しては、もはや空気中いたるところに浮遊するものでもあると示唆されているのですが、

それはさすがに誇張しすぎで、水素というのは単体では存在していませんし、

先ほども説明している通り、実際に水素を生成する場合に、そもそも論としてCO2を排出してしまっていますし、

その水素を現状オーストラリアなどから輸送し、その輸送タンカーを動かすために、また莫大な化石燃料や電力が必要となりますし、

From: 経済産業省

さらに、先ほど説明した、水素を超高圧に圧縮する際に発生する熱を冷却するためなどをはじめとして、その水素を貯蔵したり使用したりする際に、必要な電力量が、

経産省によれば、現時点で水素1kgあたり13.6kWh使用していることになり、

From: 経済産業省

例えば新型ミライの水素充填量が最大で5.6kgですので、水素を充填するためだけに必要な電力量は、合計しておよそ76kWh

つまり、この電力だけで、テスラが現在発売している電気自動車であるミッドサイズセダンのモデル3ロングレンジをほぼ満タンまで充電することができる、

故に、電気自動車の航続距離にして、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいてでも、568km分は充電できてしまう、ということなのです。

ただし長期的には、その消費電力量を6kWh程度まで抑えるという目標を設定してはいますが、

それでも電気自動車の航続距離にして2、300km分の航続距離の電力量を、水素燃料電池車に充填する際の超高圧に圧縮し、その熱を冷やすなどという、イメージするだけで複雑な行程を費やすだけで消費してしまうという、

そもそもこのように、よくメディアなどで言われている、水しか出さない究極のエコカーという表現に、大きな違和感を覚えるのは私だけでしょうか?

新型ミライとテスラモデル3の車両性能を比較

また、このような環境性能という評価ポイントともに、いくら次世代環境車と入っても、やはり皆さんが運転する車になりますので、その車両性能についても比較しなければならないと思いますが、

例えば、昨年である2020年の12月から発売を開始している新型ミライと、その車両サイズや値段設定が近い完全な電気自動車である、テスラのミッドサイズセダンのモデル3とを比較してみると、

まず電気自動車の欠点とされている満充電あたりの航続距離については、

最も信用に値するEPAサイクルにおいて、新型ミライが647kmという航続距離を達成しているのに対し、

完全電気自動車であるモデル3に関しては、568kmを達成していますので、

このように比較してみると、なんと、エネルギー満タン時における航続距離は、そこまで大差がないということになります。

ちなみに、テスラのフルサイズフラグシップセダンであり、市販車最長の航続距離を達成しているモデルSに関しては、668kmと、もはや、今回のミライよりも航続距離が長くなっていますし、

さらに来年である2022年の中旬に納車がスタートする、そのモデルSの最上級グレードであれば、満充電あたりの航続距離が837km以上とアナウンスもされていますので、

もはや、その水素燃料電池車のアドバンテージと言われていた航続距離の長さという指標は、完全電気自動車と逆転してしまっているというのが、2021年現在の最新の現状となっているのです。

モデルS Plaid+は市販EV最高の航続距離を達成見込み

また、その加速性能なども比較してみると、駆動方式が後輪駆動とAWDとなっていて、それも相まって、その加速性能には雲泥の差が出てしまっているのですが、

例えば私の所有する日産リーフに関しても、ゼロヒャクタイムは7秒前半ですので、

加速性能という観点で行くと、同じモーター駆動であるのに、下位セグメントの電気自動車の加速性能にも劣ってしまっている、ということが見て取れると思います。

加速性能は雲泥の差

さらに、車両重量に関しても、よく電気自動車は、大容量のバッテリーを搭載しているから重いので非効率である、という主張が存在するのですが、

例えば今回のミライとモデル3を比較すると、なんとミライの方が重いということになっていて、

そのミライに搭載されている、圧縮された水素を安全に保管するための高圧タンクを複数搭載しているためであると考えられます。

車重も水素燃料電池車の方が重いという結果に

そして、その水素貯蔵用の高圧タンクは、それ以外にも影響を及ぼし、

まず、ラゲッジスペースに関しては、全体的にやや大きい車両サイズであるのにも関わらず、ミライの方は273Lと、もはやコンパクトカーと変わらないレベルなのですが、

モデル3に関しては、542Lと倍近い差ともなってしまっていますし、

収納スペースは、実に倍

さらに、後席のセンタートンネル部分にその水素タンクを通していることによって、5人乗りというスペックではありますが、真ん中に乗車する方の快適性は、見ただけでも厳しいものであると想像できますが、

電気自動車であるモデル3に関しては、もちろんセンタートンネルが存在しませんので、その居住性も大きなメリットとなっていますので、

その構造がシンプルであるという点も、電気自動車の方が様々な面でアドバンテージとなっていると結論づけられると思います。

ちなみに、電気自動車と比べてはるかに複雑である水素燃料電池車においては、その高圧で圧縮された水素を保管する専用の水素タンクが搭載されていますが、

安全性の観点から、水素タンクを定期的に点検しなければならず、しかもこちらは、通常の車検とは別に実施しなければならず、

さらにその上、製造されてから15年経過すると、その水素タンクは使用が不可になる、

つまり、ミライを廃車しなければならない、ということになりますので、

この点も、ほとんどのメディアが触れていない、水素燃料電池車の不利な部分であるとは思いますが、

From:文部科学省

対する電気自動車に関しては、すでに複数のバッテリーサプライヤーが、航続距離100万km以上を耐用できる、高寿命のバッテリーを開発済みでありますので、基本的にはバッテリーを交換することはありませんし、

しかもその上、電気自動車は、既存の内燃機関車と比較しても、部品点数が圧倒的に少ないということも相まって、そのハード面の不良が圧倒的に少ないという面も持ち合わせていますので、

そのような車両性能や環境性能だけではない、一般庶民が購入した車両を長く使用していく上で考慮するはずである、トータルのランニングコストに関しても、

電気自動車の方が圧倒的にコストパフォーマンスが高いと、結論づけられるのではないでしょうか?

水素エンジン車は水素燃料電池車よりも低スペック

ここまでは、トヨタが開発を続けている水素燃料電池車と、世界が開発に注力している電気自動車とを、

その環境性能を始め、車両性能や所有コストなどの一般庶民が実際に所有する上で気になる点にフォーカスして比較しましたが、

それでは、今回トヨタの目指す水素社会を達成するための新たな方策である、水素エンジン車はどうなのかというと、

水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させて、モーターを駆動させていた水素燃料電池車とは違い、

水素エンジン車は、ガソリンではなく、水素を燃焼させることで動力を発生させるものであり、

多くの方が誤解しているであろうと冒頭も説明した、ガソリンの代わりに水素を使って走行するというイメージ通りの車種であり、したがって、既存のガソリンエンジンの大部分を活用することができますので、

そのガソリンエンジンの開発に従事する100万人もの雇用の消失をカバーすることができると、トヨタのトップである豊田社長は主張しているのです。

From: Car Watch Impress

しかしながら、今回の豊田社長の発言を始め、昨今報道されている水素エンジン車に関する情報にはいくつかミスリーディングな情報が含まれており、

まず始めに、CO2排出に関してですが、こちらは先ほどの水素燃料電池車と電気自動車であれば、全く排出することが無い、つまり、完全なゼロエミッション車なのですが、

この水素エンジン車については、既存のガソリンエンジンを搭載している、

つまり、エンジンオイルの燃焼によるCO2排出はどうしても避けられませんので、そもそもゼロエミッション車というカテゴリーからは外れてしまうということになるのです。

しかしながら、さらに知られていない事実であるのが、その水素を燃焼することによって、大気汚染物質であるNOx、窒素酸化物に関しては、今までのガソリン車と全く同様に排出してしまうという点であり、

したがって、やはりゼロエミッション車のように、何も排出することのないクリーンな自動車であるとアピールすることはできない、ということなのです。

そしてさらにダメ押しすると、水素エンジン車は、その航続距離が電気自動車よりもさらに短くなるということで、

例えば今回の24時間耐久レースに関しては、12、3周、航続距離にして50km程度走行する度に、水素充填を必要とし、確かにこれはレースという過酷な条件下ですが、

それでも低く見積もったとしても、やはり燃料電池車の方がよっぽど効率性は高く、

したがって、その実用性という観点で、もはや水素燃料電離車よりも利便性が落ちることは確定的でもあるわけなのです。

もちろん大前提ではありますが、先ほど散々説明した水素燃料電池車のデメリットについても、

水素充填の際のインフラ問題を始め、さらに居住性が失われるであろうことによる、一般ユーザーから見た総合的な車両性能など、そのほとんどが今回の水素エンジン車にも適用されますので、

正直申し上げて、水素ガソリン車というのは、いったいどれだけ現実的であるのか、少なくとも、昨今のメディアの、この絶賛具合に違和感を感じるのは私だけでしょうか?

100万人の雇用なんて生ぬるい数値で抑えられると思ってます?

そして最後に、豊田社長の100万人の雇用を守るためという趣旨の発言に関してですが、こちらはそのガソリンエンジンの雇用だけをみれば確かにその通りではあるのですが、

問題は、世界が一斉に電気自動車に舵を切っているというゲームチェンジが起こってしまっているという点であり、

仮に何かの奇跡が起き、日本市場において、水素エンジン車を普及させることができたとしても、世界で売れることができなければ意味がなく、

実際問題として、今回のトヨタの地域別の販売シェア率は、すでに8割以上が日本以外の市場、

From: 東洋経済オンライン

つまり、現在その他の市場が軒並み電気自動車に舵を切ってしまっている中において、トヨタが本気で水素エンジン車を普及させたいのであれば、

その電気自動車よりも、先ほど説明したような車両性能に優れ、インフラなどの利便性も高く、そして、スケールメリットによる車両価格の安さを達成することができなければ、電気自動車に競争することができず、

その電気自動車に全振りし始めている競合メーカーと比較しても、その電気自動車競争に遅れをとり、

結果として、豊田社長が最も恐れている雇用の消失が、ガソリンエンジンの100万人などのような生ぬるい数字ではなく、

まさに、豊田社長率いる自工会が掲げる、自動車産業に関わる550万人全体に、取り返しのつかない深刻な影響を与える可能性すらあるのです。

極めて合理性を欠く水素エンジン車

何れにしてもこのように、今回話題となっている水素エンジン車というのは、

そもそも現時点においてでも様々な問題が浮き彫りとなっている、水素燃料電池車よりもさらに問題が山積している状況であり、

しかもそもそも論として、世界で起こっている電動化革命に乗り遅れてしまえば、豊田社長が懸念している100万人の雇用消失なんてどころではなく、

自動車産業全体の550万人、それどころか、冒頭トヨタを形容した、日本の経済を下支えしているトヨタをはじめとする自動車産業が傾けば、

もはや日本全体が、冗談抜きで再起不能なレベルにまで没落していくという、考えられる最悪のシナリオまで想定できてしまいますので、

果たして100万人の雇用を守るという聞こえのいい小さな視野のみで、水素エンジンという極めて合理性を欠く車種の開発を推進するべきなのか、

非常に違和感を覚えるのは私だけでしょうか?

From: トヨタ

Author: EVネイティブ