【日本1わかりやすいスペック徹底解説①】日産アリア

アリア

今回は、日産が2021年中に発売する予定であるフラグシップクロスオーバーEVであるアリアの、特に電気自動車としての質にフォーカスして、自称世界で最も日産アリアに関して詳しい私が改めて日産アリアのスペックを完全解説していきたいと思います。

From: EV_Native

ラインナップは日本版とヨーロッパ版で異なります

まずはじめにラインナップに関してですが、搭載バッテリー容量が65kWhと、さらに大きい90kWhという2種類のバッテリーサイズを用意し、駆動方式が前輪駆動モデルと、前後二つのモーターを搭載したAWDモデルをそれぞれ用意し、その組み合わせで、合計4種類のラインナップとなっていますが、ヨーロッパ市場に関しては、パフォーマンスグレードという最上級グレードもラインナップしています。

From: EV_Native

次に気になる航続距離に関してですが、日本において最も一般的に採用されている構造距離に基準である日本WLTCモードにおいて、エントリーグレードであるスタンダードレンジモデルの前輪駆動仕様では450km、そして最長モデルであるロングレンジモデルに関しては610kmという、相当な航続距離を確保しているように見えるのですが、こちらの日本WLTCモードというのは実用使いにおいては全く信用するに値しませんので、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおける航続距離を見てみると、現状わかっている最長航続距離のグレードであるロングレンジ前輪駆動グレードの483kmからの推定値とはなりますが、エントリーグレードが348kmと、先ほどの日本WLTCモードと比較してみると、相当航続距離が落ち込んでしまっていることが見て取れますが、

こちらは繰り返しとはなりますが、高速道路を使った走行シチュエーションでも達成可能な数値となり、例えば最長モデルは満充電あたり483km走行可能で、東京を満充電で出発して、京都市内まで途中充電なしで走破可能というスペックを達成していますので、こちらのスペックだけでも相当質が高いということが見て取れると思います。

ただし、AWD仕様であるe4ORCEグレードに関しては、前輪駆動モデルよりもEPA航続距離が相当落ち込んでしまうことが予測でき、実は日本市場だけでなくヨーロッパ市場のスペックも同時に公開されているのですが、

そのヨーロッパ市場における最上級グレードであるパフォーマンスグレードの、欧州で一般的に採用されている、欧州WLTCモードにおける航続距離が400kmとなっていて、こちらのスペックが日本市場のロングレンジAWDモデルと全く同じとなり、この欧州WLTCモードからEPAサイクルへと変換した推定値が、なんと387kmになってしまうというロジックとなっていて、

日本WLTCモードと比較するとなんと200km近くもEPA航続距離が落ち込んでしまうことが推測できるので、何れにしても、日産アリアの購入を検討していて航続距離に不安を抱えている方でしたら、ディーラーなどで説明を受けるであろう日本WLTCモードに関しては右から左に聞き流し、最も信用に値するEPAサイクルにおける航続距離のみを信用するようにしましょう。

次に、充電スピードに関してですが、最大130kWという高出力を許容でき、こちらに関しては例えば、私が所有している日産リーフ40kWhの最大充電出力が50kWですので、なんと3倍近い出力で充電が可能ということになり、65kWhのバッテリーを搭載したスタンダードレンジモデルに関しては、80%充電するもでにかかる時間がおよそ30分、ロングレンジモデルに関しても、40分以内には充電を完了することができそうですので、

こちらをわかりやすいように、30分で充電できる電力量をEPA航続距離に換算してみると、エントリーグレードに関してはおよそ240km、最長グレードに関しては概ね290km分程度充電することができ、

こちらをさらにイメージしやすいように、東京を満充電で出発して、途中30分の休憩時間兼充電時間を挟むだけで、なんと広島県の中部に位置する東広島市付近まで走破することが可能ということになりますので、このようにイメージしてみると、ほとんどの方にとって必要十分なスペックを兼ね備えていると言えるのではないでしょうか?

リーフにもテスラにも採用されていない特殊なモーター

ちなみに、電気自動車において最も電費性能が悪化する高速道路の走行において、なぜこれほどまでの航続距離を達成できるのかに関して一つ推測できるのは、その搭載されている特殊なモーターによるものではないかということで、実は今回の日産アリアに搭載されているモーターは、例えば日産リーフに搭載されていた、永久磁石同期モーターという、現在世界の多くの電気自動車に搭載されているモーターの種類ではなく、「巻線界磁型同期モーター」と呼ばれるモーターの種類となっていて、

こちらの2種類のモーターの違いは、市街地走行などに代表される低速低トルク領域に関しては、従来の永久磁石同期モーターの方が効率が高いものの、

高速低トルク領域、例えば高速道路上を走行する場合に関しては、永久磁石同期モーターよりも今回の巻線界磁型同期モーターの方が効率が高いという特性があるからなのではないか、ということなのです。

From: 明電舎

また、こちらの巻線界磁型同期モーターに関しては、永久磁石同期モーターで使われるレアアースを一切使用しないのですが、そのレアアースは産出国の大半がコンゴ共和国や中国となっており、特に昨今人道上の問題や地政学上のリスクを抱えているため、コストという面で安定的でないですので、巻線界磁型同期モーターの方がコストや安定供給という側面で強みを持っていると言えます。

ちなみ価格抑制の観点で言えば、アライアンスを組んでいるルノーが欧州市場において発売している電気自動車であるZoeの搭載モーターも今回の巻線界磁型同期モーターとなっていて、すでに研究開発が進んでいるという点も、その開発コスト、そして量産コスト、さらにはパーツを共有することができるというメリットによって、原価を抑えることが可能になっているという側面もあるのではないかと推測しています。

Renault Zoe

リーフとの圧倒的な違いは「バッテリー温度管理機構」

さらに航続距離の長さに関して付け加えれば、アリアに採用されるバッテリーセルの種類も関係しているのではないかと推測していて、複数のメディアが、アリアに搭載されるバッテリーは現在最も勢いのあるバッテリーサプライヤーである中国のCATL製のバッテリーセルであると報道し、しかもその上最新型セルであるNMC811という種類なのではないかと個人的には推測していて、

こちらのNMC811というバッテリーセルは、希少なレアメタルに該当するコバルトの含有量を減らし、その上エネルギー密度を高めることのできるニッケルの含有量を増やしていますので、価格を低減させ、その上エネルギー密度を増やす、すなわち、同じ搭載バッテリー容量でも航続距離が増えるということになりますので、この搭載バッテリーの種類の関しても、今回のアリアの航続距離の長さに関係しているものと推測することができるのです。(このバッテリーの種類に関してはYouTube上で詳細に解説しています。今後は記事でもまとめます。)

そして極め付きがバッテリー温度管理機構となっていて、実はリーフに関しては自然空冷と呼ばれる、いわゆるバッテリー温度管理を行わないという方法だったのですが、今回のアリアに関しては、強制水冷機構と呼ばれる、バッテリー温度が最適になるようにコントロールしてくれる機構が搭載されていますので、バッテリー温度が著しく高い、もしくは低くなることによる充電スピードの低下、およびバッテリー寿命の大幅改善が期待できますし、先ほども説明した充電性能に関しても、ロングレンジモデルの場合、充電残量が70%に到達するまで最大充電出力である130kWが持続すると開発責任者が公言していますので、こちらのバッテリー温度管理機構のおかげによって、その優れた充電性能の高さを達成できていることが伺えると思います。

From:日産

そして加速性能に関してですが、最上級グレードであるロングレンジAWDモデルに関しては5.1秒と、日産の内田社長の言葉を借りれば、フェアレディZに匹敵する驚異的な加速性能を秘めていますので、電気自動車としての実用性だけでなくパフォーマンス性能に関しても全く妥協していないことが見て取れると思います。

最後に価格に関してですが、日本市場に関しては実質500万からとのアナウンスがありますが、こちらの”実質”という文言はおそらく政府からの42万円の補助金を含めた価格であると思いますので、購入価格としては550万弱程度になると見込んでいた方がよいかとは思います。

ただし2021年度においては、電気自動車への補助金が現状の最大42万という金額が最大80万ほどへと倍近く引き上げられましたので、仮に日産側が本気でアリアを売ってくるとすればこの価格設定は据え置きにしてくるでしょうから、アリアのエントリーグレードは、補助金を含めておよそ460万程度から購入可能となると予測できますので、仮に日産アリアを実質460万から購入可能であると考えてみると、今まで電気自動車に興味はあったがなかなか手を出せなかった層でも、検討することができるのではないでしょうか?

設計思想が一貫した世界最高峰のインテリア

ここまでは、今年中に発売を予定している日産アリアの特に電気自動車としての質について、現在までにわかっている情報のほぼ全てを解説してきましたが、ここからは電気自動車としての質以外の、特に内外装や先進性について解説していきたいと思います。

まずエクステリアに関してですが、日産の新たなロゴを付けたフロント部分が印象的で、こちらのグリル部分は空気抵抗を最小限にするために、内燃機関車のように空気を通すことはなく、その代わりに自動運転をはじめとする先進性に必要な、センサーやレーダー、カメラなどが搭載されています。

From: 日産

さらに、ホイールに関してですが、前輪駆動モデルに関しては19インチ、AWDモデルに関しては20インチのホイールサイズを装着し、特に19インチに関してはおそらく空気抵抗のことを考慮しながら、ルックスに関してもバランスをうまく取って設計されていると思います。

またカラーリングに関してですが、こちらは日本仕様は未だ公表されていませんが、参考までにヨーロッパ市場におけるカラーバリエーションを紹介すると、全部で10種類をラインナップし、ホワイトやブラックなどもベーシックなカラーを始め、フラグシップカラーでもあり、日本の暁をイメージしたサンライズカッパーと、見る角度によって深緑色や紫色にも見えるというオーロラグリーンという2種類の新色もラインナップされています。

次にインテリアに関してですが、まず目を引くのが横長の巨大なタッチスクリーンとなっていて、こちらは12.3インチのタッチスクリーンが2つ隣あって搭載されていて、例えば左側に表示したマップ情報を、右側に移動したい場合は、フリックするだけで移動可能というようなスマホの操作に近い感覚で操作を行えるとしています。

そしてそのタッチスクリーン以外は逆にミニマリスティックな印象で、車両操作に必要なボタン類の多くはスクリーン上で操作できるようにし、温度調整のボタンなどに関しても、ハプティックタッチと呼ばれる、普段は隠れていて、必要な時だけプッシュでき、しかも押した触覚は残るという非常にスタイリッシュな機能となっています。

また、そのハプティックタッチを使用しているコンソールボックスに関しては、ドライバーに合わせて移動可能となっており、こちらも非常に実用性が高いと想像することができます。

そしてさらに、エアコンなどの機器類を全てボンネット下のスペースに収納することによって、その機器類が内蔵されていたセンターコンソールを完全に撤廃し、足元の空間を最大化することができ、運転席と助手席を移動することができるようなスペースを確保できていて、こちらは実際に試乗してみましたが、想像以上の開放感でしたので、まさに日産アリアが目指している、ラウンジライクなインテリアというコンセプトを体現していると感じることができました。

また、先ほどのエクステリアのグリル部分のデザインにも採用され、インテリアにも所々散りばめられている組子模様、そして、こちらも主張しすぎない程度に、アリアのテーマ色であるゴールドを所々に配色していますので、まさにアリアのコンセプトでもある、わびさびという日本独特の趣を感じることができ、こちらは間違いなく他のEVにはない、それでいて一貫性のあるデザインに仕上がっていると感じます。

さらに後席に関しても、電気自動車専用プラットフォームを採用することによって可能となる、センタートンネルを撤廃することによる足元のフルフラットを可能にしていて、そしてその専用プラットフォームによって、Cセグメント級の車両サイズながらも室内はDセグメント級の広さを確保できているとしています。

このようにインテリアに関しては、とにかくコンセプトが一貫しているというのが今回の日産アリアの最も特筆すべきポイントとなっていて、よく電気自動車において言われるのが、ボンネット下のスペースに収納スペースがなければ電気自動車として本格的に設計されたとは言えない、という類の意見なのですが、個人的にはこの考えには否定的な立場をとっていて、

というのも、今回のアリアに関しては先ほども説明したように、ラウンジライクなインテリを目指すためにとにかく室内の開放感を最大化するというコンセプトとなっていて、センターコンソールに内蔵されているエアコンの機器類をボンネット下に収納することによって、その開放感を最大化しているということもあるので、ただ短絡的に、電気自動車にはフロントトランクがなければ本気で設計された電気自動車とは言えないという指摘は、今回の日産アリアには当たらないのではないか、というのが個人的見解となります。

最後に先進性に関してですが、まずは最新のレベル2自動運転機能であるプロパイロット2.0を搭載し、こちらは日本でもほとんどの車種が採用していない、高速道路上の同一車線上におけるハンズフリー走行を可能にする機能となっていて、例えば最近ホンダ から発表された、レベル3自動運転機能であるトラフィックジャムパイロットに関しては、例えば時速100kmなどの通常スピードに関してはハンズオフができませんので、今回のプロパイロット2.0はそのような意味において、かなり実用的なのではないかと思います。

EVの乗り心地の悪さを消す唯一の最新技術「e-4ORCE」

そしてアリアのもう一つの目玉機能が、e-4ORCEと呼ばれる4輪制御技術となっていて、こちらはコーナリングにおけるライントレース能力、シャシー制御をこれまでの自動車とは別次元に引き上げてくれるというもので、特に冬場における雪上走行時などの厳しい環境において、力を発揮すると考えられます。

そして私が個人的にe-4ORCEに期待している点が、ピッチングコントロールとなっていて、私はすでに電気自動車に7年以上乗りつづけているのですが、やはりドライバーとして運転する分には最高の車なのですが、自分がいざ助手席や後部座席に乗った場合、特に電気自動車特有の回生ブレーキによる体の前後のピッチングによって、その乗り心地がかなり悪く感じられ、こちらに関してはテスラのAWDモデルに乗っている方などから、それはモーターが1つしかついていないからだろ、というご批判をいただいたりしたのですが、例えば後輪側にモーターがついているHonda eや、それこそモーターを前後に搭載したモデル3やモデルSにも試乗したのですが、正直申し上げて私のピッチングに対する考えが変わることはありませんでした。

おそらくですが、現在電気自動車に乗っている方で情報発信されている方の多くはご自身がドライバーであることがほとんどなのではないかと想像でき、よく友人などを試乗させて助手席や後部座席に座っている私からすると、やはりそのような経験が比較的少ないことによるご発言なのかなと邪推しています。

そしてe-4ORCEに関しては、そのピッチングをかなりコントロールしてくれると説明されていて、実際に自動車ジャーナリストの川口まなぶさんや、五味康隆さんなどが絶賛していて、特に五味さんの場合は、ご自身がテスラモデルSのデュアルモータ仕様を実際に所有している方で、モデルSでもピッチングは普通に発生してしまうと明言していますので、やはりこのピッチング制御技術が実際にどのレベルを達成できているのかに相当注目しています。

ついでに先進性に関して細かいポイントを付け加えておくと、車内の静音化にも力を入れていて、例えば音響メタマテリアルという新開発の遮音材を導入し、さらに先ほど解説した巻線界磁型同期モーターに関しては、特に高速走行時において高い静粛性を期待できるという特性もありますので、繰り返しとなりますが、とにかく乗員の快適性の最大化というコンセプトを極限まで追求するために、静粛性を高めることにも注力していることがお分りいただけたかと思います。

ここまで、日産の威信をかけたフラグシップクロスオーバーEVであるアリアの、電気自動車としてのスペックをはじめとする様々なスペックを紹介しましたが、やはり注目なのが、2021年に発売する電気自動車としても世界に通用する質をしっかりと達成できているだけでなく、特に「快適性」という設計思想のもとに全てが統一されているという点であり、現状日本市場において最高レベルの電気自動車であると断言することができます。

この日産アリアに関する発売時期などに関する続報も、随時アップデートしていきます。

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