日産が電気自動車最先進国であるノルウェー市場において、ついにクロスオーバーEVであるアリアの予約注文を受け付けることを発表し、さらに、その欧州市場におけるスペックが更新されましたが、
私自身最もおすすめのグレードが廃止するという衝撃について、なぜ日産がそのような考えに行き着いたのかに関する謎を、徹底的に解明します。
世界に通用するEVであったが、、
まず、今回の日産アリアに関してですが、昨年である2020年の7月にワールドプレミアが開催された日産の新型電気自動車となっていて、
すでに世界初の本格量産電気自動車を発売していた日産が、ついに新型電気自動車を発売するということで、
日本のみならず、世界が注目していたのですが、
その電気自動車としての質については繰り返し解説している通りですが、もちろんテスラが発売する同セグメントのモデルYのみに関わらず、
現在競合メーカー、および電気自動車スタートアップが次々と発売する電気自動車SUVと比較しても、全く遜色のない質を達成することができていましたので、
その発売時期、さらにはその実際の販売台数にも非常に期待することができていたのです。
しかしながら、大問題となってしまったのが、その肝心要の発売開始時期となっていて、
そもそも2021年の中旬というアナウンスでしたので、この時点でもすでに競合車種に完全に遅れを取る状況であったわけでですが、
6月中に発表された、初回生産限定グレードであるLimitedにおいて、その発売開始時期がこの冬シーズンにずれ込む、
つまりその実際の納車開始時期が、なんと来年である2022年の初頭にまでずれ込む公算となってしまい、
さらに駄目押しとなったのが、66kWhのバッテリーを搭載した前輪駆動グレードであるB6という、
そのアリアのエントリーグレード以外の全てのグレードについては、その発売時期がさらにプッシュされ、
なんと2022年の夏以降という、現時点からさらに一年ほど待たなければならなくもなりましたので、
このタイムラインが発表されたことによって、一定数の方が、このアリアの購入を断念してしまったというケースも散見されていたわけですね。
ヨーロッパ市場でも予約注文開始
そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、
そのLimitedの先行予約受付をスタートしていた日本市場だけでなく、いよいよ海外市場においてもその先行予約がスタートするということで、
それが現在世界で最も電気自動車のシェア率の高い、北欧のノルウェー市場となっていて、
特にそのノルウェー市場に関しては、電気自動車、特にSUVセグメントの電気自動車が次々と投入されてしまっている、
つまり、アリアの潜在的な購入層が大きく奪われてしまっている真っ最中なわけですので、
欧州日産がその機会ロスを少しでも減らすために、
特にノルウェー市場において、先行して予約注文を受け付ける格好となったのではないか、ということなのです。
そして、その予約注文が実際にスタートするのが、この今月である9月の9日であり、
実はこの9月9日というのは世界電気自動車デーという、電気自動車に関連した日にちということですが、
今回そのアナウンスに合わせて、欧州日産が、ヨーロッパ市場バージョンのアリアの最新のスペックを公開し、そこで少しばかり変更点が加えられてもきましたので、
今回はそのヨーロッパ市場におけるアリアのスペック、
および、そこから推測できる我々日本市場向けのより詳しいスペックについてを、一挙に解説していきたいと思います。
最もオススメのグレードが突如廃止
まず、今回のヨーロッパ市場におけるアリアのラインナップは、全部で5種類設定されていたということで、
実は我々日本市場においては4種類であるなのですが、
そのヨーロッパ市場に関しては、最上級グレードとしてe-4ORCE Performanceというグレードを追加で設定しているのです。
しかしながら、この最新に発表されたグレード設定では、結局4種類のグレード設定となり、
今回ラインナップから削除されてしまっているのが、66kWhのバッテリー容量を搭載したe-4ORCEグレードであり、
したがって、日本市場とは異なり、ヨーロッパ市場においては、
66kWhの2WD、91kWhの2WD、91kWhのe-4ORCE、そして91kWhのe-4ORCE Performanceという4種類となったのです。
実は本メディアにおいては、今回のアリアのオススメグレードを尋ねられた際には、基本的には66kWhのe-4ORCEをおすすめし、
ほとんどの方にとって必要十分な航続距離を確保できていながら、
それでいて今回のアリアの最大の魅力とも言える、車両の前後にモーターを搭載しつつ、
それでいて、4つのブレーキをそれぞれ独立して制御を行う、いわゆるブレーキトルクベクタリング機能も備えたことによって、
もちろん雪上走行における安定性に加えて、乗員の乗り心地に関してもその最大化を図ってきていますので、
何れにしても、そのアリアの魅力を最もコスパよく体感できるグレードが、
66kWhのe-4ORCE、日本市場でいうところのB6のe-4ORCEであったわけなのです。
こちらはおそらくですが、そのノルウェー市場においては、
やはり冬場の気温がかなり低下するため、その分、満充電あたりの航続距離が求められますし、
さらに、ノルウェー市場で発売されている競合車種を見てみると、
その多くにおいて、やはりAWDグレードでは、より大きいサイズのバッテリーを搭載したグレードのみ設定されているということからも、
この直近になって、元々の計画を変更し、
スタンダードレンジグレードのAWDバージョンの発売は取りやめとなったのではないかと、推測することができそうです。
乗り心地の質の高さには大きく期待
ただし、今回の先行予約開始のアナウンスにおいては、そのノルウェー市場における値段設定はアナウンスされませんでしたので、
おそらくその9日にスタートする、実際の先行予約スタートの段階において発表される、実際の値段設定、
特に競合車種である、フォルクスワーゲンID.4、テスラモデルY、そしてヒョンデIONIQ5などと比較して、
どれほど競争力のある値段設定を実現することができているのかも、わかり次第情報をアップデートしていきたいと思います。
そして、今回のノルウェー市場とは別に、我々日本市場における最新情報も明らかとなっていて、
それが今回のアリアを実際に開発したエンジニアによる、特にエントリーグレードであるB6に関する、より詳細な解説動画なのですが、
特に気になっているのが、やはりその走行中の乗り心地という点であり、
日産側が公開してきた資料によれば、
競合車種であるプレミアムセグメントの電気自動車SUV、おそらくドイツメーカーの電気自動車たちなのかもしれませんが、
それと比較しても、市街地走行時のロードノイズの低減に成功していると説明しています。
さらに、巡行走行時におけるモーター音についても、
特にそのような競合EVと比較しても、明らかにその音を抑えることに成功していると説明し、
こちらに関しては本メディアにおいては以前も解説している通り、その搭載モーターを巻線界磁式モーターに変更したことによって、
その特性である、一定速度を保ちながら走り続けるという巡行時においては、そのモーターへの電力を完全に切ることができるため、
その分今回指摘されているモーターからの音、
そして本メディアの推測している、電費性能のさらなる改善に寄与しているもの、と推測することが可能です。
ちなみに、その音をはじめとする乗り心地において、段差乗り越え時の衝撃の大きさという観点でも説明があり、
このように競合のプレミアムSUVと比較しても、よりその衝撃が少なく済むと説明され、
こちらに関しては、アリア専用に設計された、最新型のサスペンションを採用したことによって、
より高い衝撃吸収能力を兼ね備えているように思えますが、
果たしてこの比較対象としているプレミアムSUVが一体どの車種であるのか、
さらには、そのプレミアムセグメントにおいて、一部の車種に採用されているエアサスペンションを搭載した車両と比較すると、
どの程度の乗り心地となるのかについては、やはり実際に公道上を試乗する他無いとは考えられます。
アリアはリーフより電費が高い?
ただし、そのアリアの開発に携わってきたエンジニアによると、
アリアのエントリーグレードであれば、ひとまわり小さく、さらに車重もおそらく300kgほど軽いリーフと比較しても、
その電費性能は3%ほど、むしろアリアの方が上回っていると主張してはいるのですが、
こちらに関しては、おそらく何か事実誤認をされている可能性が極めて高く、
リーフe+の搭載バッテリー容量が62kWh、そして日本WLTCモードにおける航続距離が458kmとなりますが、
アリアのB6グレードについては、66kWhというバッテリーを搭載しながら、その航続距離は450kmと、
したがって、その電費性能を比較してみると、明らかにアリアの方がその電費性能で劣っていますので、
こちらに関しては、アリアの方が電費性能が3%ほど優っているという根拠が、
いったいどのような前提から導き出されているのかは非常に疑問ですし、その説明が待たれるところであるとは思います。
そして、これらの最新情報をすべて織り込んだ上で、日本市場におけるアリアの、最新のスペック表を更新した際に、
やはりどうしても一点解決することができないアリアの謎に関してですが、それが、アリアの満充電あたりの航続距離となっていて、
というのも、すでに日本市場バージョンとして、日本市場で一般的に採用されている日本WLTCモード、
さらには今回公開された、ヨーロッパ市場において一般的に採用されている欧州WLTCモードにおける、グレード別の航続距離は、すでに公式に発表されているわけですが、
例えば、エントリーグレードであるB6を見てみると、
日本WLTCモードが450km、そして欧州WLTCモードが360km、
つまりその比率は8割となり、一般的な電気自動車と比較しても同じような比率であり、
全く同様に、B9においてもその比率は82%程度と、概ね同じような比率を達成しているわけです。
しかしながら、ヨーロッパ市場におけるe-4ORCE Performanceグレード、
すなわち我々日本市場におけるB9 e-4ORCEグレードについては、
日本WLTCモードの航続距離が580kmを達成しているのにも関わらず、その欧州WLTCモードでは400kmと、
その比率は、およそ69%と、B6やB9と比較しても、明らかにその比率が悪くなってしまっているのです。
したがって、今回なぜ66kWh搭載のe-4ORCEグレードを廃止してしまったのか、
それは、やはり欧州で一般的に採用される欧州WLTCモードにおいては、
特にツインモーターとしてより緻密なモーター制御を行うe-4ORCEグレードの航続距離を稼ぐことができない事によって、
特にスタンダードレンジグレードのB6を、ラインナップすることが合理的でないと、
欧州日産側が判断したのではないか、ということなのです。
ただし、現時点において公開されているスペックというのは、いまだに公式機関による数値では無いですので、
果たしてこのe-4ORCEグレードの電費性能が、通常の前輪駆動グレードよりもかなり悪化、
特にその欧州WLTCモードのテストサイクルに存在する超高速走行モードによって、日本WLTCモードの航続距離よりも相当悪化してしまうのではないか、
という主張は、現時点では推測の域を出ることはありませんが、
こちらに関しては、本メディアにおいて毎回説明している、
日本WLTCモードを信用するなという説明を信用している方たちにとっては、非常に気になる謎ではあるとも思いますので、
いったいなぜ欧州市場において、私自身最もおすすめのグレードであるスタンダードレンジグレードのe-4ORCEを廃止してしまったのか、
そして、なぜ91kWhのバッテリーを搭載した、B9 e-4ORCEグレードの航続距離が、
欧州WLTCモードになると、ここまで航続距離が悪化してしまうのかに関する、日産側の説明、
およびそのテクニカルな理由についても、わかり次第情報をアップデートしていきたいとは思います。
アリアはやはり欧米市場向け?
また、私自身のアリアの設計思想に関する以前の考察において、
先ほど少し触れた、リーフとは全く異なる巻線界磁式のモーターを採用したことによって、
その高速道路を一定スピードで巡航するような、高速巡航時において高い電費性能を発揮することができる見込みであり、
したがって、今回のアリアというのは、そのような高速巡航による使用用途が多い、
より長距離を走行する、欧州や北米市場にフォーカスした設計思想なのではないかと考察し、
それはさすがに違うだろとご批判をいただいたのですが、
今回欧州日産が公開してきた、そのラゲッジスペースの広さの数値を見てみると、
我々日本市場などの右ハンドル市場よりも、欧米市場で一般的な左ハンドル市場の方が、そのラゲッジスペースを広く取れていることからも、
やはり今回のアリアというのは、左ハンドル市場向けに最適化してきているのではないか、
要するに、やはりその左ハンドル市場である欧米市場にフォーカスしている車種なのではないか、ということですね。
電気自動車戦争はすでに始まっています
何れにしても、ようやく電気自動車戦争がすでに勃発しているヨーロッパ市場、特にその電動化率が極めて高いノルウェー市場において先行予約がスタートするということは、
日本メーカーの本気の電気自動車が、いよいよ世界に戦争を仕掛けるという観点において非常に期待することができる一方で、
残念ながら、そのノルウェー市場をはじめとするヨーロッパ市場への実際の納車スタートについては、
なんと来年である2022年の夏以降のスタートともアナウンスしてきましたので、
実際の電気自動車戦争への参戦スタートは、あと1年近く後にもなってしまうという、
昨今の電気自動車戦争の激しさを見れば見るほど、その動きの遅さは残念であるとしか思えませんし、
戦争に参戦するために、入念に準備をしている間に、競合メーカー勢に一気にその市場を独占されていた、
電気自動車戦争に参戦する前に、茹でガエルとなってしまっていた、なんてことがないことを祈るばかりですし、
それ以外の日本メーカー勢についても、すでに茹でガエルとなっていないことを祈るばかりとなっています。
From: Nissan Europe、Nissan(開発エンジニアによるアリアの解説)
Author: EVネイティブ
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